第82話

どうしよう。



すごいドキドキする・・・。



胸の音、



聞こえちゃったりしないかな・・・。




嬉しいのと緊張とが入り交じって



うまく足が前に出ないよ ───。









気がつくと、いつの間にか自転車置場に着いていた。



いつも来ている場所なのに、


逆方向から歩いて来ただけで、違う景色のように見える。



「乗れよ、後ろ」



『え・・・?』



いつもは二人で自転車を押しながら帰るのに。



「乗っけてってやるって さっき言っただろ?」




そういえば、そんなこと言ってた気もするけど、



こっちは心臓バクバクで そんなこと完全に完全に頭から抜けてた。



手と足で探りながら 後ろに乗っかる。



マサトの後ろに乗せてもらうのは


去年


命がけで線路から助けてもらった時以来・・・。




「よし、行くぞ。


とばすからな。



危ねぇから、ちゃんとつかまってろよ」



マサトは



そんなこと 意識なんかしてないんだろうな・・・。



あたしは無言のまま ぎゅっとマサトの体をつかんだ。












『うっきゃあぁぁぁああああ‼



やだやだやだやだ

無理無理無理無理‼



止めて止めて止めて止めてえぇぇぇぇ~~~~‼‼‼‼‼』



すっかり日の暮れた通学路に、


あたしの絶叫が響き渡った。




「っつーか、


少し黙って乗ってらんねーのか おめーは⁉



耳がパンクするって‼」



『だって、この坂でこんなスピード出す⁉


絶対ありえないって‼』



通称、心臓破りの坂を 全速力で下り切ったところで、


今度はマサトが

あたしの声に悲鳴をあげた。

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