第81話

「で、近道しようとしたつもりが、


視界がきかなくなって 迷子になったってわけか」



『うん。そう』



マサトと並んで自転車置場へ向かって歩きながら、

事のいきさつを説明する。



「俺がいなかったら、ひと晩中さまよってたりしてな」



『ひっどーい‼


あたしトロいけど、

そこまで頭悪くないもん‼』



「あっそぅ。


んじゃ、バイバイ」



『わー‼


ごめんなさいごめんなさい、


置いてかないでぇー‼』



慌ててマサトに向かって拝む仕草をしてみせる。



「ったく、これが俺じゃなかったら


どうすんだよ。



心配させんなよな」



マサトはそう言うと、前を向いて黙りこんでしまった。



『そ、そうだよね。


ごめんね、


あたしいつもマサトに心配かけてばっかで。



・・・バ、バスケ部、


こんな時間まで練習してるんだね』



こういう時、

どう返していいのかわからなくて、


必死に言葉を探す。



「これから、



こういう時は

俺を呼べよ。



迎えに・・・行ってやっから・・・」



『あ・・・❗』



ぎゅっと手を引き寄せられる。




「家まで 乗っけてってやっから」



自然に絡まる指と指。



手、繋ぐの



はじめて・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る