第80話

そう思い、


右手でフェンスを伝いながら進んでいたその時だった。




「おい❗」



不意に誰かに腕をつかまれた。



『や・・・‼』



強い力。



一瞬、


レイプ、誘拐といった言葉が頭をよぎる。



怖い・・・・・・‼




反射的にその手を振り払い、その場を離れようとスタートの姿勢をとった。




すると、



「おい‼


待てよ‼ お前、こんなとこで何やってんだ⁉」




え・・・?



聞き覚えのある声。




『マ・・・サト・・・?』




恐る恐る振り返り、

声のする方向へ顔を向けた。



「おう」



呆れたように答えるマサト。



「やっとわかったのかよ。



本っっっ当に お前って、


ドジっつーか トロいっつーか・・・」



『ドジとか言わないでよ❗


本気でびっくりしたんだから❗』



言い返した途端、

足の力がガクンと抜けた。




・・・これって、




腰が抜けたってやつ・・・⁉




「おい、大丈夫かよ?



っつーか俺、何もしてねぇぞ⁉」



その場にへなへなと座り込むあたしに、


マサトは慌てたように言った。




『ごめん・・・。



腰・・・抜けたっぽい・・・。



マサトの顔見たら、

なんかホッとし過ぎちゃったみたい・・・』



「お前なぁ・・・」



あたしの言葉に、

マサトも一気に力が抜けたらしく、


大きなため息をつきながら座り込んだ。

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