第61話

『かみ・・・わざ・・・?』



「そ」



ちょっと待って❗



神業なんて言われるようなすごい特技、


あたし持ってないし・・・‼



ピアノのことを言ってるのかもしれないけど、


特別これといった超絶技巧があるわけでもない。



ずっと続けてきたことだし、


人に負けたくない気持ちこそ確かに強いけど、


まだまだ修業中の身だ。




「納得できてなさそーな顔だな」



『うん』



だって、そうだもん。



「・・・んっとに信じらんねぇよな。



何で右手と左手で違う動きとかできんだよ」




へ・・・・・・?




「何 ハトが豆鉄砲くらったような顔してんだよ。


口、開いてるぜ」



『うそ、マジ?』



「つーか、お前おもしろすぎ」




マサトはそう言ってひとしきり笑った後、


急に真面目な顔で言った。




「要はさ、



お前には当たり前のことでも、


できねぇヤツにとってはすげぇ事なんだよ」



マサトの視線があたしを捕らえる。



「俺はピアノのことはよくわかんねぇし、


音楽のセンス ゼロだから 気の利いたこと言えねぇけどさ。



お前が部活とかピアノとか 夢中になってんのはよくわかる。



俺なんかからしてみれば、


そこまで音楽とかの良さがわかること自体、信じらんねぇし、



いくら学校の中って言っても、


先輩押しのけて一番になれるって、



やっぱりすげーよ」




どうしよう・・・。



なんか、超 照れるんですけどーーー‼

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