第60話

「・・・島」







「おい川島‼‼」




『え? あ、はいっっ⁉』




帰り道。



マサトの大きな声に、ふと我に返る。




『ご、ごめん。



あたし、ボーッとしてた・・・』



「ボーッとしてたどころじゃねぇよ。



ボケーッとし過ぎて ボケ作にでもなったかと思ったぜ」



『何それ。


っていうか、誰⁉』



「あー? 宇宙人・・・?」



『・・・もういいや・・・💧』



マサトのマヌケな答えを聞き流しながら、


ふぅっとため息を漏らした。




「心ここにあらずって顔だな」




誰のせいよ・・・⁉



あたしの頭の中は、


木原さんに対する焦りでいっぱいだっていうのに。




まずいよね・・・。



何だって、焦ったり対抗意識燃やし過ぎると 必ず失敗する。




マサトを信じていれば、木原さんが何をしようが関係ないはず。



それなのに、


あたしは今、思いっきり動揺している。




「部活、大変なのか?」



『え? どうして?』



「いや、何か疲れてそーな顔してっから、


しんどいんかと思っただけよ」




マサトは さっきあたしが体育館にいたことには全く気づいていないようだった。




『大丈夫だよっ❗


今日は合わせもうまくいったから ちょっと早めに終わったぐらいだったし』



明るく答える。



「ならいいけどよ。


あんまり根つめすぎんなよ。



お前、そんでなくてもトロいんだから、


せめて練習にまともに出るくらいのことしねぇと シャレになんなそうだから」



『あー‼ ひっどーい‼



こうみえても 頼ってくれる後輩だっているんだからねっっ‼』



思わずマサトに平手をお見舞いしそうになった。



そりゃあ、トロいのは事実だけどさ。




「ま、それでも神業みたいなマネができんだから OKなんだろうな」

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