第58話

え・・・・・・?




「違う・・・の・・・?」




何・・・?



他に何があるの?




その時だった。




「お疲れ様です❗」




通りのよいさわやかな声があたしの耳に届いたのは・・・。












「マサト、お疲れ❗」



「おい、くっつくなよ。



ガキの頃じゃあるまいし」




声の主はマサトを平気で下の名前で呼び、


体を寄せているらしかった。




「何⁉ あいつ‼」



直ちゃんがすかさず反応する。




『・・・例の 転校生だ・・・』



あたしはうわずった声でそれだけ言った。




あたしを射すくめるような


挑戦的な声を



聞き間違うはずはなかった。




「あの子、先週男子バスケ部に入ったマネージャーだよ。



気が利きそうな感じじゃないけど、


あのビジュアルでしょ?



男子のヤツ、すっかり鼻の下のばしちゃって」




いっちゃんは呆れたという感じで言った。




「京ちゃーん、


オレにもタオル❤」



「もぅ、


武内先輩はちゃーんと、

カノジョさんが待ってるじゃないですかぁ❤」



木原さんは 声のトーンを上げて楽しそうに話す。




彼女の声が響くたび、


あたしの体は凍りついたように固まっていく。




「美奏、大丈夫?


顔色悪いよ」




いっちゃんの声にも、



『うん・・・、大丈夫』



と答えるのが精一杯だった。




マネージャー・・・。



考えもつかなかった。



確かに、


マネージャーなら 堂々とマサトの近くにいられる。



あたしの知らないマサトを


一番近くで見ることができるんだ・・・。

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