第57話

軽快な声が耳に届く。



『いっちゃん⁉』



あたしと直ちゃんは同時に声をあげた。



「美奏、元気してる?



ナオとは体育とか家庭科とか一緒だけど、


美奏たちとはなかなか会わないね」



『そうだよね』



いっちゃんはいつものサバサバした調子で言った。



「いっちゃん、こんなとこで油売ってて平気なの?



バレー部って 結構厳しいんじゃないの?」



「あ、平気平気。


今 休憩時間中だし。



それに、1年の時と違ってちょっと余裕できたしね」



いっちゃんと仲良くなったのは、

小学生の頃 合唱団で一緒だったのがきっかけ。



パートも出身校も別だったけど、

いっちゃんはあたしのことをずっと見てて、


入学式の時に一番に声をかけてくれた。




好奇心旺盛で、

今までにやったことのないものをやりたいと言って、バレー部を選んだ。



豪快で、思ったことをスパッと言う彼女らしい選択だと思う。




「そっかぁ。



ついに呑気な美奏も 偵察に来たか。



ま、無理もないよね、


ああロコツにやられると」




あまり人のことに干渉しないいっちゃんが、


いつになく渋い口調になりながら、入口側へ顔を向けた。




1年生達は相変わらず


高い声でつつき合ったりしながら騒いでいるようだった。




『・・・・・・すごいよね。


ジャニーズかなんかのイベントみたい。



ま、みんなカッコイイんだろうから無理もないのかな・・・?』




あたしも苦笑しながら返した。




「は⁉ 何言ってんの⁉



っつーか、よくそんな呑気でいられるね、美奏」

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