第56話

ボールの音はそのまま一直線にゴールの方向に向かって突き進む。



それを追う足音。



体育館が ちょっとした緊張感に包まれる。




シュッ




ボールは まさにストライク(おいおい、バスケだっつーの💧)といった感じで、



無駄な音を立てずに ゴールにおさまった・・・らしい。



自分の目で確かめられないのが悲しいところ。



さっきの1年生達が 「キャー‼」と黄色い歓声をあげた。



『はぁ・・・』



あたしは小さくため息をついた。



こうやって、知らない女子が集団で騒いでいるのって、どうも苦手。




別に 彼女達が何をするわけじゃないけど、


ああやって群れてる様は、



いじめの中心人物が 取り巻きを集めて

あたしの悪口を言ってる光景を思い出させる。




それに、ここにいるのは


もしかしたらマサトのファンかもしれない人達。




それでなくたってあたしは、


体が悪いことで

下級生からも石を投げられていた過去を持つ。




マサトがあんなに楽しそうに話し、打ち込むバスケ。



ホントは近くで


その真剣な姿を見てみたい。




でも、いくらマサトが認めた彼女でも



障害者のあたしが表に出ることは、


自分にとっても

マサトにとっても

嫌な思いをする原因になるかもしれない。




あたしがからかわれたり たいして美人でもないくせにって文句言われたりすれば、



多分マサトはあたしをかばってくれる。



そのせいで マサトまで他の人からバカにされたりしたら それは絶対イヤ。




だから今まであたしは、

マサトの部活を見学しに来なかったんだ。




そんなことしなくても、あたしがマサトを好きな気持ちは変わらないし、


マサトも変わらない態度であたしに接してくれる。




それでよかった。



マサトが夢中になるものを



邪魔したくはなかった・・・。
















「ナオ❗ 美奏❗



どうしたの? めずらしいじゃん⁉」

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