場違い

第54話

『ねぇ、やっぱやめとくよ 直ちゃん』



体育館に向かってずんずん歩いてく直ちゃんの手を引き戻しながら訴える。



「何オドオドしてるのよ⁉



美奏っちがそんなんじゃ ホントに北川のこと、誰かにとられちゃうかもしれないんだよ⁉



美奏っちの見てないところで 例の転校生が北川に急接近してたらどうすんの⁉」



直ちゃんは自分のことのようにムキになっている。



その気持ちはとても嬉しいんだけど、


何だか 人を取り合いするような感じがして、


正直 あまり乗り気になれない。



「北川が他の女の子 好きになってもいいの⁉」



『・・・・・・それは・・・』




何も言えない。



矛盾してるよね、あたし。




取り合いたくないとか言っても、


結局 他の誰かとマサトが仲良くするのは やっぱり嫌で・・・。





あたしは直ちゃんに引っ張られるまま、


階段をかけ下りるしかなかった。
















体育館は 教室のある本校舎から渡り廊下でつながっている。



汗の匂いと人の熱気、



外から漂ってくる砂の香りが、


運動部の練習場所の独特の空気を作り出す。




ダン・・・ダンダン・・・!




ドリブルの音が響く。



「あ、やってるやってる」



直ちゃんに続く形で 入口へ続く段差を上った。

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