第50話

『どう? クラス、慣れた?』


「うん。タケシが一緒だから うるさいのなんのって」



タケシっていうのは、

小学生の頃からガキ大将的な存在として有名だった男子。


去年は一緒のクラスだった。



さんざんいじめられたけど、


和解できた今となっては 味方につけとくと便利なヤツと化してる。



だって、そうしとけば子分の男子にいじめられないですむもん。



「美奏っちは? クラスどうなの?


転校生ともう話とかした?」




転校生・・・。



あの新歓の日のことが蘇る。




「美奏っち? どうかした?」



『あ、ううん。何でもない』




あたしは慌てて笑顔を作った。



「うそ。美奏っち すぐ顔に出るからわかるよ」



う・・・。



直ちゃんに痛いところをつかれ、あたしは思わず黙った。



木原さんがあたしに話しかけてくることは、あの日以来なかった。


特に何をされるわけでもなく、日々はいつも通りに過ぎていってた。



ただ、


彼女があのリカたちのグループとよくつるんでいるのは気になったけど…。




ううん、それだけじゃない。



あの時の彼女の、自信に満ちた言葉…。



思い出すたびに、何とも言えない不安が頭をよぎる。



マサトのことが好きで、美人で積極的で、


完全無欠な女の子。

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