第45話

「あの子、いろんな意味で目立つでしょ?



2、3年の部員から結構 目つけられてるのよね」




うちの部は歴史がそれほど古くないせいか、


上下関係はあるにはあるけど、運動部や吹奏楽部ほどは厳しくない。



親しく付き合ってる人同士なら、

下の名前で呼び合ったりするのは割と普通だし。



それでも目をつけられたりするってことは、


よほど何か問題があるってことなんだろうか。




こういうことって本来、

まだ2年生のあたしが受けるべき相談じゃないと思うけど、


どこのパートにも属さない 完全中立の立場だから、持ちかけやすいのかな・・・?




「多分、半分以上はやっかみじゃないかと思うんだけどね。



先生やあたしはどうしても経験のない人にかかりきりになるし。



声量とか よく通る声質とか、あたしたちが喉から手が出るほど欲しいものを彼女は沢山持ってるから、



パッと見 他の人より目をかけられているように見えるんだと思うの。



ちょっと条件は違ったけど、去年の今頃は のぞみが居場所なさそうにしてたわね」




・・・音楽の世界って、ホント難しい。



一番大事なのは 本人の努力だって思うけど、


時々 天才的な素質で 努力の結果を上回る成績を上げる人がいる。



それを吸収したいと思う反面、


自分が努力して身につけたことや それでも出来なかったことを なぜこの人だけが・・・⁉



って思う気持ちも湧いて・・・。



「新人のクセにとか 未経験のクセにとか言う子もいるし、


彼女もあのキャラだから 好き嫌いははっきり別れちゃうのよね。



でも、上の子の言うことを聞かないわけじゃないし、


練習にも真面目に取り組んでるから、

注意するのもおかしな話なのよね。



だから 誰かがそのへんをちゃんと認めてくれていればいいと思ったの。



あたしは立場上、

誰の肩も持ってあげることはあまりできないから」



カオリ先輩の声が一段明るくなった気がした。




でも、やっぱり部長さんって大変なんだな・・・。




一人でドンと構えていればいいあたしと違って、



カオリ先輩は 自分のパートの中でも独自の関係を作りながら、全体のパイプ役もこなさなきゃならない。



中立で、平等でいなきゃという思いがビシビシ伝わってくる。

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