第37話

『幼・・・なじみ・・・?』



その言葉の響きに、越えられない壁のようなものを感じる。



心が、痛む・・・。



「言ったでしょ?


南小出身だって。


家も近所だったの。



で、どうなの?



つきあってるの?


つきあってないの?」



挑戦的な口調。



『つ・・・、つきあってるよ‼』



「ふーん」



木原さんは じろじろとあたしを眺めて言った。



「ま、別にいいけどね」



『な・・・⁉』



だったら聞くな!



『ちょっと、人のプライベート詮索しといて何なのよ!


普通、初対面の人に向かって薮から棒にそういうこと聞く⁉』



あたしは苛立って言った。



「別に 関心ないって意味じゃないわよ。


あなたがマサトといい仲なんだったら 一応言っといた方がいいわね」



何・・・?




「マサトは渡さないから」




・・・・・・・・・




あまりのことに、

開いた口がふさがらない。



あのー、


マサトとつきあってるのはあたしなんですけど・・・?




「マサトがどうしてあなたみたいな冴えないコとつきあい出したのか知らないけど、


あたしは小さい時から ずっとマサトを好きだった。



遊ぶのだって、いつも一緒だった。



途中からしゃしゃり出てきたあなたなんかに


マサトは渡さない」




どこぞの少女マンガのような展開に、


あたしはただ呆然としていた。




こんなこと言われたこともないし、



だいたい 人からバカにされたことはあっても、


ライバル視されることなんてなかった。



「ま、仲良くやりましょ」



差し出された右手を、おっかなびっくり握る。



仲良くやろうって言われたって・・・。



その声が全然笑ってない。



こういうのが一番恐いのかもしれない・・・。




真里たちにいじめられた時とはまた違うタイプの恐れに、


背中がぞくっとするのを感じた。






人と争うのは嫌だ。




でも



争いから逃げて、

大事な人を奪われるのはもっと嫌だ。




あたしは




やっぱり、この人と争わなきゃいけないんだろうか・・・・・・。

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