第35話

ていうか、あたし


お礼言おうと思って、江崎君探そうとしてたとこだったしっ!



・・・さっき江崎君が何も言ってくれてなかったら、


空気固まったままだったと思うから・・・』



あたしは緊張を必死で隠しながら言った。



おとといのことをまだ心の中で引きずっているのか、


まっすぐ向き合ったら ものすごくドキドキしてきた。



「よかった・・・。


川島さんが迷惑じゃなければ、それでいいんだ。



でも本当に、おとといはいきなりあんなこと言ってごめんね」



なんか・・・



こうやって必死に謝っている姿を見ると、



おとといの音楽室でのちょっと強気な態度がウソみたい。




ずいぶん印章が違うなって思う。




「なんかさ、今の話聞いてて思ったんだけど、


江崎って 美奏と似てるね」




え・・・?




絵里の唐突な言葉に、あたしはちょっと面食らった。



「美奏もよくそういうことあるじゃん。



部活で誰かに意見求められた時とか、何か言ったあとに、


さっきあたし言い過ぎた⁉ とかって気にしたりするし。



言われた相手は別にそんなふうに思ってないんだけどね」




うーん。



江崎君に似てるのかどうかはともかく、


確かにそういうとこはあるかも・・・。




「でも、大変なんだね、川島さん」



・・・・・・・・・。




確かに 遠目がきかなかったりする分、不便なことは多い。



だから、そういう言い方で当たっているのかもしれない。



でも、改まってそう言われると、


なんだか悲観的な気がして あまり好きじゃない。




『平気だよっ!


あたし、もうこの体で13年生きてるし、


最初からこの状態だから、こんなもんだと思ってるからさ』



あたしは明るく言った。



「だからだよ」




え・・・?



「さっきの話の中で、誤解されないようにって言ってたけど、



そういう発想って 現に誤解をされたことがあるから出るものだろ?」




鋭い・・・。



あたしがどう返していいかわかんないでいると、



「江崎君、やめなよ。


そこまで立ち入ったこと、突っ込むとこじゃないよ。


美奏ちゃん困ってるよ」



さゆが助け船を出してくれた。




「おととい 何があったのか知らないけど、


美奏ちゃんの目のこと 知らなかったってことは、

まだ深い話とか したことないんでしょう?

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