第34話

体の弱点を公にすることは、


いじめる側から攻撃しやすいポイントを公開するようなもの。




それなりのリスクも伴っている。



担任も あたしを偏見の目でしか見られないような人だったし、


うまくいく保証なんてなかった。



でも、何もしないまま 周りの手によって理不尽に潰されるのだけは嫌だった。




総合の時に、時間をもらって、


さっきと同じような話をさせてもらった。




その時、


真っ先に反応し、


拍手をくれたのが、さゆだったんだ・・・。



クラスの流れが


あたしの存在を受け入れる方向に向かっていくきっかけになったのは、


あの時のさゆの態度だったと思う。




でも、


さっきさゆが同じように反応し、拍手を送ったら、



あの日のことも、演技とかサクラだったように感じてしまうかもしれない。



そもそも、体が悪いということを申告することで、



空気が凍ってしまうことも、


拍手をされることも、



本来はあるべきじゃないことなんだよね、きっと。



だって、世の中には



いろんな人がいて当たり前のはずだもん。



体の悪い友達がクラスにいても、全然普通みたいな


そういう社会が理想なんだよね? 本来。




「でもさ、


江崎には感謝だね。



あいつ、ちょっと的外れなこと言ってたけど、



あいつが発言したことで、クラスの空気が全然変わっちゃったもん」



絵里がまじめな口調で言った。



確かにそう。



あの時、江崎君が発言しなかったら、あの空気 修正できなかったと思う。




『絵里、江崎君のこと知ってたの?』



「うん。


家 近所だし、

小学生の頃から知ってる。



ピアノバカみたいなとこ あるけど、


根は悪くないよ」



ピアノバカ・・・。



あたしもお兄ちゃんからよく言われるけど・・・。




『あ、あたし、


お礼言ってくる!』



「あ・・・。み、美奏ちゃん」



さゆが声をあげたのと、


あたしの肩を

誰かが後ろから叩いたのは ほぼ同時だった。



『⁉⁉⁉』



思わず身を固くするあたし。



「ご、ごめん!


びっくりさせちゃって・・・」




江崎君⁉⁉



「あの・・・、


さっき、いきなりみんなの前であんなふうに言っちゃったけど、


もしかして 迷惑だったかなって心配になって・・・』



真剣な声。



『全然平気だよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る