第24話

「江崎 圭?


あぁ、去年一緒のクラスだったぜ。



色白でピアノバカのヤツ」



自転車置場から校門へ向かう道を歩きながら、


マサトは変人でも見たような口調で言った。




「そういやあいつ、


コンクールの後、

相当悔しがってたからな。



なんであいつが⁉みたいな」



そうなんだ・・・。



あの時、



確かに、嬉しかった反面、


あたしより上手い伴奏者は沢山いたはずなのにって、


自分でも半分信じられないような気持ちで表彰式の壇上に上がった覚えがある。



その下で、涙を呑んだ人もいたってことか・・・。



『でもさ・・・。


悔しがってたってことは、


それだけ一生懸命練習してたってことだよね・・・』



「何? お前、そいつに気があるわけ?」



あたしのつぶやきに、マサトがめずらしくムッとした口調になった。



『そんなんじゃないよ!


そんなんじゃないけど、さっきね・・・』




あたしは音楽室での出来事を話した。





「ふーん。で?」



マサトは相変わらずふてくされたような口調のまま。



『で? じゃなくて‼


人が混乱してんのに そんだけで片付けるわけ⁉



それにさっきから何怒ってんのよ⁉』



マサトの態度に、あたしまでイライラしてくる。



「・・・お前は


マジメにやってないわけ?」



『は?』



「・・・だから‼


ピアノ、マジメにやってねぇのかって聞いてんだよ‼



ついでに何も怒ってねえし‼」



マサトは呆れたように聞いてきた。



『や、やってるよ!』



あわてて返事を返す。



「だったら、別に気にすることねぇじゃん」




・・・・・・⁉




「お前が一生懸命やってんだったら、人が何言おうと知ったこっちゃねぇじゃんか。



そのまま自分の姿勢貫けばいいんじゃね?」



あ・・・・・・




「普段は気ぃ強そうにしてるクセして、


お前、人に何か強く言われると すぐ自信なくしてシュンとするよな。



別に 悪いことしてんじゃねぇんだから、堂々としてろよ」




言い方はあくまでぶっきらぼう。



でも、


マサトなりに受け止めてくれたことは ちゃんと伝わってくる。




やっぱり、マサトにはかなわないや・・・。




『ありがと・・・。



それとさ、



あたし、さっき何か悪いこと言った?』




「何で?」

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