第23話
「じゃあねー」
「明後日 頑張ろうねー」
練習が終わり、
みんなそれぞれに散っていく。
「美奏、おっ先🎵」
『うん、明日ね 絵里』
ひらひらと手を振りながら音楽室を出て行く絵里を見送りながら、
あたしもゆっくり後を追うように廊下へ出た。
部活が終わった後は、マサトと一緒に帰るのが日課。
待ち合わせはいつも あたしのクラス。
だいたい あたしの方が早く終わることの方が多いし、
逆でも マサトはじっと教室で待ってるようなタマじゃないから、探すの大変なんだもん。
教室の自分の席に着き、
今 レッスンで読んでる譜面をバッグから出す。
マサトを待つ間、
何もやるべきことがない時、あたしは楽譜を読むことにしている。
さっきもちょっと話したけど、
あたしは視力が低すぎるせいで、譜面を見ながら両手で弾くことはできない。
まともに曲を仕上げるには、譜面を丸暗記することが必要だ。
階名で小さく歌い、ピアノの音を思い浮かべながら
一音一音 確実に頭に入れていく。
こうして 譜面と向かい合う時間もあたしは結構好き。
次はどんな音になるんだろうって ワクワクしてくる。
少し辛いなって思うのは、
譜読みそのものよりも、一通り読んだ譜面を繰り返しさらって、頭に叩き込む過程。
覚えにくい曲の時は ホント泣きそうになる。
ーー 真面目にピアノやってるなら
人の伴奏してるヒマなんかないと思うけど ーー
なぜか さっき江崎君に言われた言葉が、頭の中に蘇った。
真面目にやってる。
毎日の練習は欠かさないし、
合唱部の伴奏でも、
毎日何かを学びたいと思いながら取り組んでる。
彼みたいな音は出せないけど、
それだけは自信を持って言える。
なのに、
なぜか心がかき乱された。
痛いところを突かれたような心境・・・。
『違う‼
あたしは真面目にピアノやってる‼』
「何一人で叫んでんだ? お前」
気がつくと、いつの間に来ていたのか
マサトが不思議そうにあたしを見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます