第19話

音がしないよう、


そっと



そうっと音楽室の扉を開け、足音をしのばせて様子をうかがった。




窓際のピアノの前には細長い人影。



男の子…?




廊下で聞くのとは比べものにならない


迫力のあるベートーベン。



嵐を思わせるその曲と 迫り来るような音からは


圧倒されるような気迫すら感じる。




すごい…。




どんどん引き込まれてく。




もう 誰が弾いてるかなんてことより、


どうしたらこんな音が出せるんだろうってことの方が気になってた。








押し寄せる音の波が消え、


鍵盤からその指が離されても、


あたしはその場を動けずにいた。




「あれ…? 君…」



『え…?』



ふと我に返ると、その音の主がゆっくりこちらへ近づいて来た。



『あ…、あの…、


ごめんなさい!


勝手に入って来ちゃって…』



さっきのインパクトが強すぎたのと緊張とで、

うまく思考が働かない。

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