第18話

いったん教室に戻って楽譜を取り、音楽室に向かう。



あたしは去年の秋から、合唱部で伴奏者をしている。



コンクールとか発表会みたいな 人前で歌う場や全体練習で弾くのはもちろん、



発声練習のリードやパート練習のサポートもする。




11月にあった校内合唱コンクールの伴奏をし、最優秀伴奏者賞をもらったことでつかみ取ったポジションだ。




表舞台で歌うことはなくても、みんなと同じ部員だから、



筋トレなんかは一緒にやる。



腹筋や呼吸筋を鍛えるメニューはきついけど、


そのおかげでスタミナがついたし、


声の透りが良くなった気がする。



(もともと声は大きい方だから、周りで聞かされる方はうるさかったりして)




今日は、明後日の新入生歓迎会での部活ごとの発表の練習だ。



前年度の校外コンクールの曲を歌うのが恒例になっているらしい。




あたしはそれには参加していないけど、


同じ曲をうちのクラスが校内コンクールでやったから、譜面は丸暗記できてる。




でも、このところずっと新曲の練習をしていたから、弾くのは久しぶり。



練習が始まる前に指と頭を慣らして、


気持ちを切り替えたかった。




渡り廊下を抜け、新校舎の中を小走りに音楽室に急ぐ。





🎵~~~🎵




『?』




🎵~~~~~🎵





ピアノ…⁉




間違いない。



空耳なんかじゃない。




生のピアノの音…!




誰?



音楽の先生とは違う。




先生の音よりもっと、

音量があってダイナミックな…、



手の大きな人っぽい音。




こんな音を出す人、いたっけ?



一体、誰…?




誰が弾いてるの…⁉






自然に足が速くなり、


小走りが完全に駆け足になっていた。

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