困惑

第16話

「うぁー、よく食ったぁー!」



昼休みの屋上。



すごい速さでお弁当を食べ終えたマサトは、

満足そうに大きく伸びをした。



今日は始業式だけだから、授業はもうないけど、


あたしとマサトは部活の練習のために学校に残っていた。



屋上のこの場所は、あたしたちの指定席。



「何? お前、まだそんだけしか食ってねぇの?


相変わらずトロいヤツだなぁ」



『自分が早すぎなんだってば!



よく噛んでゆっくり食べた方が体にいいんだよ』



「あ、そのハンバーグうまそう」



『…って、人の話聞いてないし‼』



あたしはあわててハンバーグを取られるのを阻止した。



ずっと食が細かったあたしだけど、


部活をやるようになってからは 人並みにお腹が減るようになっていたから、メインのおかずを取られてはたまらない。




「そういやさぁ」


『ん?』


「さっき校長が言ってたじゃん?


ボランティアがどうとか」



さっきの話か。



「いきなりボランティアなんて言っても、


何するんだろうな?」



マサトは想像がつかないといった様子で言った。



『何だろう…?


町のゴミ拾いとか掃除とか…?



あ、老人ホームとかに慰問に行くとこもあるらしいよね』



「へぇ。


お前、結構詳しいな」



『別に詳しくないよ。


あたしだってやったことないし』



ニュース番組の地域の話題なんかのコーナーで聞いたことあるようなことを並べただけだもんね。



『ま、いじめられなきゃなんだっていいよ』



「おい…。


なんか論点違くね?」



『違わないって‼


人のこと平気でいじめるようなヤツに


いい子みたいな顔してそんなことしてほしくない‼』



ボランティアって、世の中的にはとてもいいことだし、


今まで身近でそういうことってなかったから やってみればいいと思う。



だけど、



いじめを中心になってやってる人間には


正直な話、そういう活動に参加してもらいたくない。



そんなヤツが人の目にとまって、やさしい人扱いされるのは嫌だ。



「お前、まだこだわってるのか?」



『こだわるよ!』



あたしは少し怒りながら返した。



『やった方は忘れてるかもしれないけど、


やられた痛みはなくなんないよ!』

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