第5話

『う~ん、



気持ちいい~❗』






お母さんの小言と お兄ちゃんのツッコミに送られながら



軽やかな足どりで学校に向かう。





雲ひとつない空から降り注ぐ


暖かな春の陽射し。




少し冷たい海風が、


まだ短くし始めたばかりのスカートを揺らしてく。





足早に商店街を抜け、




急な坂を一気に駆け上がる。








『うわぁ……』




坂を上りきったところで、


思わず声が出た。







満開の桜。





青い空に、薄いピンク色がよく映える。






『きれい……』





去年の入学式の日も、



こうして この桜を見上げたっけ。





掌に 風に舞った花びらが1枚


ふわりと落ちた。





花びらをそっと握りしめ、



ブレザーのポケットにしまった。






去年と同じように



あたしの進級を祝うように



桜はあたしを迎えてくれている。







でも、




去年の今頃とは決定的に違うことがある。






それは、






自分にウソをついていないこと…。

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