第26話

「や、絶対サリナには言われたくないって」



もう一人がすかさず突っ込む。




「だって、かわいいんだも~ん」



「てゆぅか、超失礼だって。


サリナだって身長たいして変わんないし。



ほらぁ、 かわいそうに


彼女引いちゃってるじゃん。



ごめんねぇ、



この子ってば、 礼儀知らないからさぁ」



「それこそ あんたに言われたくないって❗」



二人の漫才みたいなやりとりを聞いていたら、


自然と笑いがこみ上げてきた。




「サリナー❗ 油売ってないで手伝ってよー‼」




別の人が入り口の方から怒鳴った。



「じゃ、頑張ってね。美奏ちゃん」




サリナと呼ばれた先輩は、あたしの肩をポンと叩くと、呼ばれた方に走って行った。






気づくと、直ちゃんも自分の席へ案内されているようで、



あたしの周りには誰もいなくなっていた。



(またこの席か…)



あたしはど真ん中の列の一番前の席に座りながら 小さくため息をついた。








小学生の頃からあたしは、この席を指定されることが多かった。



黒板が読みやすいからという学校側の配慮と、


先生の目が届きやすいという意味もあるみたい。




配慮はありがたいけど、



正直、 あまりいい気持ちはしない。



席替えの時、仲間外れになるのはやっぱり淋しいし つまらない。

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