第22話
あたしも迷わず入部希望を出した。
でも…
顧問の音楽の専科の先生は、
あれこれ理由をつけて、あたしの入部を拒否し続けた。
めずらしくあたしが引き下がらないでいると、
あたしにだけ入部テストを課した。
先生が黒板の前に立ち、あたしは後ろの黒板の前に立って、
先生の指揮の拍子を当てるというもの。
あたしは…
先生が立っているその姿さえ、見ることができなかった。
当然結果は不合格。
譜面を覚えるのなんか、ピアノで鍛えてる。
譜面台に立てた譜面なんて、あたしにとってはただの紙切れ。
あたしのピアノは全て暗譜だ。
指揮だって、
見えなくても 音合わせを重ねることで、十分カバーすることができるんだそうだ。
現に、全盲(全く目が見えないこと)のソリストだって、
立派にオーケストラと共演しているんだから…。
って、これは楽器メーカーに勤めるお父さんの受け売りだけど。
でも、当時のあたしには、先生を説得できるだけの力はなかった。
大抵のことは耐えてきたはずだけど、
この時ばかりは 悔しくて情けなくて、
自分の部屋にこもって わんわん泣いた。
市内の児童合唱団に入ったのは、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます