第23話

お母さんの勧めだった。




もともと歌うことは好きだったし、



みんなでひとつの曲を作り上げた時の達成感や、


歌そのものの楽しさを満喫できたのは、


大きな収穫だったと思う。




でも…





あの先生の顔を見るたび、傷口をえぐられるような気分になるのは


とうとう卒業まで変わらなかった。




あれ以来、あたしは


学校生活に楽しいことを望むのをあきらめてしまったのかもしれない。











「クラスを確認したら、受付を通って、教室へ移動してくださーい‼」





上級生らしい人の声に、あたしは我にかえった。



「行こう❗」



上原さんが あたしたちを促した。


「あ、 上原さんは何組?」



直ちゃんが聞いた。



「へっへー。 実はあたしも4組ー✌」



上原さんが いたずらっぽく笑って言った。



この時 ──



何だか、ものすごく大きなものに 背中を押される感じがした。



どこから湧いてくるのかわからない。



でも、心の中に広がっていく思い…。



今までの苦しかったこと、



さっき 桜の下で感じた気持ち、



上原さんに言われた初めての、超照れくさい


でも、 すごくすごく嬉しかったほめ言葉。

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