第16話

あたしがこれから通うことになる若宮中学校は、


家から15分程歩いた丘の上にある




…と聞いていた。



『これ、上るの⁉』



思わず、すっとんきょうな声をあげてしまったあたしに、


お母さんの冷静な突っ込みが飛ぶ。



「あんた…、 下見もしてなかったの?」



図星だ。



『だって、だいたいの道はわかってたし、


お兄ちゃんがこんなとこ、サルでも迷わないって…』



「あんた達…。


どっちもどっちね…」



確かにこんな急な坂、見落としようがない。


丘の上なんて言えば 聞こえはいいけど、


これじゃ 丘じゃなくてガケだっつーの‼




上り始めると、


坂の傾斜で思いっきりアキレス腱が伸ばされるのがわかる。



あたしの肘をつかんで、半歩後ろからついてくるお母さんも 心なしか辛そうだ。



こんな急な坂の途中でも、


両側にはちゃんと家が建ってるのが、何だか不思議な感じがする。



地震が来たらどうするんだろう、


なんて くだらない心配をしながら50mほど上っただろうか。



急に傾斜がゆるやかになり、視界が一気に開けた。



『…わぁ❗ すごい…❗』



あたしは思わず足を早めた。



「美奏?」



お母さんはちょっと戸惑いながらついてきた。

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