第15話

口げんかで言い返しても、


一生懸命ピアノの練習をしても、


一生懸命勉強しても、


バカやっても…。




でも、それはとても空しくもあった。



あたしも、みんなみたいに部活やったり


友達とワイワイ騒いだり、


思いっきり笑い転げてみたい。



得意なことを、得意だって言いたい。




努力してやり遂げたことを、まともに評価されたい。



お母さんの言う通りにしても、いじめは全然減らなかった。



それどころか、学年が上がるにつれ、その陰湿さは増してる。



心安らかに登校できた日なんて、何日もなかった。



どうせいじめられるなら



本来の自分を出してしまえば


少しは楽になれるのかな…?




「響一、あんたも行かなくていいの?


澄歌はもう出かけたよ」



「げ‼


やべぇ、 遅刻だ‼」



お母さんの言葉に、お兄ちゃんがあわてて玄関へ走って行った。



「気をつけなよ❗」


お母さんが言い終わらないうちに、ドアが閉まる音がした。




「まったく、響一も中3になるんだから、もうちょっとしっかりしてくれないと…。



さ、 もう少ししたら、あたし達も出ないとね」



『うん』



「美奏、 父さんも そろそろ出るから、気をつけて行くんだぞ。


母さんのこと、頼むな」



『うん』



お父さんの言葉に、あたしは大きく頷いた。

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