第12話

次の瞬間、



あたしはお兄ちゃんの背中に、思いっきり平手打ちをかました。




「…っ痛ぇなぁ❗



これが本当に


゙おとなしくて積極性に欠ける゙とか言われてるヤツの姿かよ⁉」



背中をさすりながら、お兄ちゃんが毒ついた。



『お兄ちゃんが変なこと言うからじゃん。



かわいい妹の晴れの日ぐらい、


やさしい言葉のひとつやふたつ、かけてくれたってよくない?』



「自分でかわいいとか言ってんじゃねーよ、 暴力女」



やりとりを聞きながら、


やれやれといった調子でお父さんとお母さんが顔を見合わせた。




『ほんっと お兄ちゃんって、デリカシーがないよね。


運動バカ』



「50m、10秒かかるヤツに言われたかないね。


ピアノバカ」



「響一❗ 美奏❗


いいかげんにしなさい❗」



お母さんの声に、

あたしたちはしぶしぶ口げんかを中断させた。




「美奏ちゃんの二重人格、ぶりっこ」



「澄歌❗」



今度はお父さんが澄歌の言葉をさえぎった。



「だって、 本当じゃん。


家の中じゃ言いたいこと言ってるクセに、


外に出たら、人が変わったみたいにおとなしくなっちゃってさ。


男ウケでも狙ってんの?」



『…どこで覚えてくんのよ⁉


そういうこと‼』

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