第11話

ワイシャツにネクタイ姿のお父さんもやってきて、


あたしの背中をポンとたたいた。




「でも地味だよね、その制服。



あたし チェックのミニスカートがいい」




横からそう口を挟んだのは、妹の澄歌(すみか)だ。




『シックな感じでいいじゃない。



クラシックの楽譜が似合いそうでさ。



それに黒って、オトナのカンロクって感じするし』




「あたしとひとつしか違わないくせに」




澄歌が口をとがらせて反論した。



『わかったわかった。


せっかく気に入ってるんだから、水ささないでよ』




「ま、 美奏ちゃん のっぺりした顔してるから、


おしゃれなの似合わないもんね」



『の…⁉』




…ったく、 ああ言えばこう言う…。




この妹に、あたしはいつもやりこめられてしまう。




ま、 確かに


あたしはお母さんに似てしまったらしくて、



パッチリ二重なわけでも、


派手な顔立ちなわけでもないんだけどさ。





「へぇー」




いつの間にかお兄ちゃんが来て、あたしの姿をまじまじと見ていた。




『どう? 似合う?』



あたしは立ち上がると、


お兄ちゃんの前で クルッと一回転してみせた。



「…馬子にも衣装」



バコッ‼

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