第8話

『゙む゙ だよ』


「じゃあ、これは?」


『゙が だよ』



女の子たちは顔を見合わせると、


隣のページの一番右上のあたりを指差し、同じ質問をした。




「頭を動かさないで❗」



本の方に身を乗りだそうとしたあたしに、鋭い声がとんだ。




『あ❗ わかった❗ ゙お゙ だ❗』



あの時あたしは、



台本を読んで 字を言い当てていると思っていたけど…、




もしかして、


頭に入っていた 字の並びでこれを切り抜けていたの…?




そう思うと、すべてのつじつまが合った。






あの日のことも、



あまり仲良くない子が時々よってきて、


指を目の前に出したり離したりしながら、



「これ 何本?」



って、聞いてくることも…。





「なんだ。読めるんだ。つまんない」




そう言って、女の子たちは散って行ったけど、



もしかしてあの子たちは、


あたしを役からおろしたかったから、あんなことをしたんじゃ…⁉




『なんだ。…そうなんだ…』




あたしは無意識につぶやいていた。



あたしは、



あたしの体は…、



みんなとは違うんだ…。






悲しいとか、悔しいとか、


そういう気持ちは全然起きなかった。





涙も出なかった。






ただ思った。

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