第7話

スケッチブックに描いた絵も同じだ。




今度は、ちゃんと読めるところまで本を近づけてみる。





紙と顔がくっついてしまうんじゃないかってところまで近づけて、



やっと楽に絵も字も読み取れるようになった。





普通の人が見たら、何ともおかしな姿勢…。




でもその姿勢に、全く違和感は感じなかった。




あたしはずっと、


こうやって 読んだり書いたりすることをしてたんだ…。






そう思った瞬間、



あたしの中で、ある光景がよみがえった。










あれは何ヶ月か前…。


お遊戯会の練習が始まった頃だ。





劇で、ナレーターの役をもらったのが嬉しくて、



あたしは何度も台本を読み返していた。




「美奏ちゃん、字なんか読めるの?」



突然、何人かの女の子たちに取り囲まれた。




クラスの中でもわりと目立つタイプの子たちだ。


劇で役をもらっている子も何人かいる。




「じゃあ読んでみて」




『うん❗



むかしむかし、 あるところに、やぎの おやこが…』




と、突然女の子の一人が


あたしの手から台本を取り上げた。




「美奏ちゃん、これ、何ていう字?」



本をあたしの体から離し、


青字で印刷されたナレーターのセリフを指差す。

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