第6話

先生がひらがなで板書したのを


みんなで声をそろえて読んだり、



壁に貼られた掲示物を見たり、



そんな機会は、いくらでもあったはず…。





それでも今までは、



そんなこと考えもしなかった…。





周りの風景が、遠のいていく気がした。














自由時間 ──



あたしは一人で教室の窓辺に立っていた。




外で動く黒っぽいかたまりは、


紺の園服のクラスメイトたち。




あれ?

他のクラスの子かな?




男の子なのか女の子なのかも、

よくわかんないよ。





教室を見回してみる。



白いロッカー、



並んだ机、



おそろいの椅子、



カラフルなおもちゃ箱…。




はっきり細かいところまで見えるのは、


本当に自分の手が届く範囲までだ。



一番廊下側の机のあたりで、


女の子が何人かでかたまっている。




声の調子で女の子だとわかるけど、


誰なのかははっきりわからない。




自分のロッカーから いつも使っているスケッチブック、



本棚から絵本を取り出してきて 開いてみる。





最初は、みんながしているみたいに本を離して、


背中をのばして…。




やっぱり、 並んだ字は黒いゴマ粒にしか、



挿し絵も、 何となく赤っぽいとか、青っぽいとしか見えなかった。

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