第3話

悔しさと悲しさ、怖さのあまり、


思わずあふれ出る涙。




それを園服の袖で拭いながら、あたしは途方に暮れた。




この二人に挟まれた保育園生活。


想像するだけでもおそろしい。




川島美奏(かわしま みな)、 当時4歳。




あまりに突然で早すぎる、 闘いの幕開けだった。












あたしの保育園入園一年目の記憶は、



この日の この時のものしか残っていない。





アルバムにも楽しそうな表情のものがほとんどない。




すべてが、あの日の事件に集約されていると言って 間違いないと思う。




お母さんの話によると、



泣いて帰って来ない日が珍しいくらいだったらしい。



生まれつき、


生涯下ろすことのできない荷物を背負っているうえに、



学年一チビで泣き虫。



意地悪したい年頃の男の子たちにしてみれば、


格好のエジキだったに違いない。




担任は、注意したり止めたりする気配は全くなく、


状況は悪くなる一方だった。






それでも、



年長組に上がる頃には、


ちょっとずつではあるけれど、仲良しの友達も出来始めた。





でも…




今度は、女の子たちからの 陰湿な嫌がらせや言葉の暴力が増えていった。

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