第3話 彼女にバレる?

学校では俺の母親みたいに世話を焼いてくる朝比奈若菜。

つやつやの黒髪セミロング、ぱっちりした目、筋の通った鼻、ぽっちゃりした口。

そしてそのモデルの様な抜群のスタイル。さらにそのファッションセンス。


ウチの学校は制服があるけれど、私服OKだし髪色も校則で決まっていないから

茶髪は当然、金髪や青、赤、オレンジなどいろいろな髪色の女子生徒がいるのだが

朝比奈若菜は黒髪をずっと保っていて、「髪色は変えたくないなぁ」だそうである。


いつもセンスのいい服装をしている。

そしてたまに制服のセーラー服で来ることもあるのだが、これがまた似合ってる。

絶品だと言っておこう。


ただメイクはばっちりである。

それほど派手めな顔つきでない。すっぴんを見た女子によれば

「すっぴんでこれ?メイクしなくていいじゃん」ってことだが、彼女によれば

「外出るならメイクしないとね。女子のたしなみよ」と言っていたとか。




「だから!あんたはもっとシャキッとしなさい?」

「だって・・・」

「だってじゃなくて。そんなんじゃ今度の期末試験もダメかもよ」

そう、夏休み前の1学期期末試験が目前に迫っていたし、正直俺は焦っていた。

それほど勉強が出来るわけでもなく、常に中の下あたりの順位をウロウロしていたし

小テストだって、赤点すれすれのときもあるから尚更だ。


「少し勉強見てあげようか?」

「え?マジで?」

「まったく見てられないわよ!小テストも定期テストも全くダメじゃん!これじゃあ 

 進学だって危ない。ってか無理よ!!」

いちおう大学進学はしたいと思っているのだし、もうちょっと頑張らないとなぁとは

常々思っていたから、若菜の提案は”渡りに船”ともいえるだろう。


「若菜が見てくれるの?」

「そうよ。いやなら塾にでも行くのね!」

「見てくれるなら、どこでやるの?」

「そんなことは決めなさい!ったく!ファミレスとか有るじゃん」

「わかったわかった!じゃあ駅前のサイゼでいい?」

「いいよ」


サイゼリア。

言わずとしてたイタリアンレストランチェーンである。

なかなか美味いし安価だから、俺たちの様な年中金欠病の学生にはありがたいのだ。

まぁ俺の場合は、そっち方面の結構金のかかる趣味がある訳だし、金欠は仕方ない



「じゃあ、数学からね。ここからやってみな」

「あー、もうわからねぇ・・・何が書いてあるのかまったく・・・」

「私が説明するから、やってみ」

とか言いながら、なんのかんのと世話を焼いてくるのは、俺に気があるのか?

そんなことをいつぞや聞いたことが有ったけれども。

「んなわけないじゃん!なんでアンタに?」

まぁそりゃあそうだなぁ・・・

俺の隠れた趣味がバレたらマズいし。


「んったく!やる気あんの?あんたさぁ」

「あ、あるよ、だから教えてもらってんじゃん」

「どうみてもやる気無いよねぇ・・・あっ!そうだあんたの家でやれば良いっか!」

えっ!いまなんつった?【あんたの家でやれば】ってか?そ、そ、それはマズい・・


もしも、万が一。

部屋のクローゼットを開けようものなら、俺の性癖がバレるのは必定!

「いやぁ・・・ここで・・いいっす」「ん~~~なんか隠してない?」

すると若菜は俺の顔をじーっと見て、「こりゃあ行かないとダメだな」


「えええええ~~~~~!!!!!」

「さぁ!行くわよ!あんたの家へ!」

「いやぁぁぁぁ・・・やめてぇぇぇぇぇ」

「なんで拒否るのよ?あんたの家でしょうに」

「いやぁそれはそうなんだけど・・・」


手を掴まれて、サイゼから”連行”される俺。

道行く通行人からは好奇の眼差しを向けられるのは、ある意味ご褒美なのかも。


とは言え、俺の秘密がバレるのはマズいよなぁ。どうすっか・・・・



「ママぁ、お兄ちゃんがモデル連れてきた!」

「あらまぁ。ホントにモデルさんじゃない!なんであんたがこんなきれいな人と?」

「あ、おじゃまします。康平くんのクラスメイトの朝比奈若菜です」

「朝比奈さんね、こうちゃんをよろしく頼みますね」

なに頼んでんだよ・・・おふくろの言い方はなんか勘違いしてないか?って思うが。


俺の部屋に入りながら

「なんかさぁ、お母さんの言い方ってわたしとアンタが付き合っている風じゃん」

「そ、っそっそうかなぁ・・・あんな感じなんで許してやってくれ」


「おー・・・これが康平の部屋?ヲタまるだしじゃんw」

「悪かったな!ヲタで」

「別にいいじゃん!あんたの趣味なんでしょ?それよっか勉強しよ」


ってことで俺と若菜の勉強が始まったわけだが、

何かクローゼットをジッとみてるんだよなぁ若菜が。「何見てんだよ」

「あんたの私服どんな感じなのかなって!思ってさ。見て良い?」


ああああああああーーーーーダメに決まってんじゃん!開けたら最後なのだぁ!


第3話 完

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