第2話 本当の俺

俺がオンラインゲームから離れた理由。


それは。

部屋のウォークインクローゼットの扉を開けると、そこにあるのは。


セーラー服やメイド服、ギャル系の衣装やら・・・


実は”女装”が好きなのだ。

ひとりで出かける時は女装、いわゆる”男の娘”で出かけていくのである。


もちろん、悪友の健太郎とかと出かける時は、男子高校生ファッションだが。



今日も今日とて秋葉原へ出かけていく俺はセーラー服でお出かけである。

赤いスカーフ、黒のニーハイソックス、茶色のローファー。もはやJKである。

妹の理沙に頼んでメイクもしてもらって、テンションアゲアゲであるのだ!

「もう!お兄ちゃんさ、そろそろ自分でメイク覚えてよね!時間ないのよ理沙も!」とかほざいているが、俺をメイクしている時の理沙は楽しそうなのだ。


電車に乗っていても、誰一人、俺を注目するやつはいない。

休日なのに、セーラー服姿のJKとは、これ如何に?と思われるかもしれないが、

”制服ディズニー”に行く女子高生とかもいるしわけだし、

それを考えれば、何の不思議でもないではないか!




秋葉原の裏通りに、その店はある。

外観は、極々普通の貸しビルだが、その扉を開け2階へ上がるとそこは別世界。


高校の制服もブレザーにプリーツスカートも有れば、ギャル風なミニスカートも

あり、そのブレザーも色とりどりだが、やはり人気なのは紺色のようだ。

すでに先客がいて店員と、あれやこれやと話し込んでいるのだが、

その内容もブレザーの新色とか、ソックスの色とセーラーの色合いとか、

「このメイクに似合うJKの衣装とかある?」など聞いているやつがいる。


「あれ?師匠じゃないっすか!おひさしぶり!」

「そういうきみは、霞のお銀かな?」


ここでは俺を本名で呼ぶ野暮な奴はいない。

”師匠”と呼ばれているのだが、その理由は俺には判らない。

霞のお銀と呼んだやつは、俺とはこの店ですっかり意気投合した男の娘で、

こいつの本名はもちろん、実年齢も学生かどうかも解らないが、お銀と呼んでいる。


「どうです?師匠。この制服、いいっしょ!」

「いいねぇ、お銀に似合ってるよ!」

「これは県立某高校の女子制服っす!この制服を着たいがために受験する女子も

 多いって言うことですよ」

「ほぉ~~~なかなか良く似合ってるよ、お銀」

「あざぁーっす!」


そうそうセーラー服のスカーフを買おうと思っていたのだった。

「赤は・・・ってか今日着けているし。青もいいなぁ。でも定番の白もいいなぁ」

などと選んでいると・・・


「おっ!こ、こ、これは・・・」

俺が欲しがっていた白いセーラーで襟に3本の白ライン、スカートが紺色で同じく

3本の白ラインが裾に入っているスタイル。前から探していたんだよねぇ・・・

「師匠!さすがお目が高い!私もこれ探していたんですよねぇ」

と言われても、それがさすがに我が弟子でもある、お銀であってでも譲ることは

できないのだ。


「すまん、お銀。今日のところは俺に譲ってくれないか?」

「師匠・・・申し訳ない!それは私でも出来かねます」

「いやいや、先に見つけたのは俺だ!だから優先購入権は俺にあるのだ」

「そ、そんなぁ・・・解りました師匠。今回はお譲りしますが、

 次回同じようなパターンなら、私に無条件でお譲りいただきますが?」

「わ、わか、解った!じゃあそうしよう」


よぉーし!今度のミーティングにはこの白セーラーで行こう!



第2話 完

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