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髪色を変えてから私の欲しいものが増えた。


前は好きな漫画やアニメのグッズが9割を占めていたけど、あの頃はグッズ5割、洋服3割、コスメ1割、雑誌1割になっていた。


そういうのは女友達に分かってしまうらしく、ショッピングに連れ出されておすすめの物を私の体に押し当てられて店員さんと一緒に購入を勧めてくる。


けど、ひとつ5000円近くあるものばかりで買うことに躊躇して、いつものようにプチプラで着古しているスウェットと裏起毛のあったかズボンで大学1年の冬を過ごしていると私の背後からボソっと聞こえてくる。


『紅芋ちゃん』


始めに聞いたのは食堂で蕾を待ちながら、窓越しでぼーっと落ち葉を掃いているおじさんを見ていた時に。


個性的な名前のアイドルかなんかだと思ってラジオの様に周りの音を聞いていたけど、その紅芋ちゃんはあんまりいい様に言われてなかった。


最初はダサい。


次はデブ。


その次は芋臭い。


確定はすぐ赤くなるほっぺたを真後ろにいたサークルにいた先輩の女王様に罵られたこと。


綺麗な者の意見はみんな正しいと受け入れ、何もしてない私の悪い噂が流れる様になった。


教室では芋なのに彼氏がいる。


蕾がバイト中のサークルでは、ぼっちのインキャオタク。


月1ある懇親会では紅芋カップル。


おつまみとして置いてあったボンボンショコラを1個食べただけで顔が真っ赤になる私たちはやっぱり端っこにいるしかなくて、このサークルにいる意味を見出せなくなった私たちはその場で辞めることを決め、卒業お祝いに初めてのレイトショーに行くことにした。


蕾「あったかーい。」


と、少し酔っ払っている蕾は新年会懇親会で高まった私の熱をもらって嬉しそうに笑った。


瞳「酔ってる?」


寒空の下で頬も鼻も赤く染める蕾は雑に巻いた白チェックのマフラーを地面に引きずっていても気にせず歩くので私は空いてた片手で巻き直す。


蕾「よってないよぉ。」


瞳「酔ってるじゃん。」


私よりもお酒に耐性がない蕾はふわふわな体で一歩前を歩いて自動券売機で2つ映画券を買うと、5分過ぎてしまったシアタールームに入って2人きりの貸切状態で明後日公開終了するラブロマンスを見る。


けど、蕾は酔いが回ってしまって耳でしか映画を楽しんでなくて私は半開きになった口を閉じさせる様にキスをすると、蕾はゆっくりと目を開けて私の唇に残ったチョコを味わう様に一度上唇を吸ってきた。


それに私は驚いてちゅっとリップ音を鳴らした蕾から口を離し、とろけた目同士を合わせるとスクリーンからも同じ音が聞こえてきて私は真っ暗なシアタールームで人生イチ顔を真っ赤にさせてたと思う。


すると、いつのまにか冷えた蕾の手が私の顔を冷やす様に添えられ、私の背後でたくさんキスをしている2人と一緒のキスをしてきた。


まだほろ酔いな私はチカチカと黒フィルムの中にいるような蕾だけにしか目に入らなくて、いつもとは違う雰囲気に飲まれる。


蕾「…いこ。」


と、蕾は終電間際なのにまた私をどこかに誘った。


瞳「なに…?」


私は喉で行き先を止めて照れ始める蕾に聞き返す。


蕾「一緒にお泊りしよ…?」


蕾は言葉を濁し、私の頬に置いていた手を首元に落として親指で無い喉仏を撫でた。


その時の私はネットカフェでオールしようという意味で受け取り頷いてまた映画を見たけど、その映画で恋仲の男女がお泊りする意味を知り、アルコールが抜けて鼻だけが赤い蕾と一緒に初めてラブホテルに行って、初めてパパ以外の男の人に裸を見せて、幼稚園ぶりに血が出る痛みで涙を流した。



環流 虹向/ピンヒールでおどらせて

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