第5話 仕入れ完了



【マジックショット】


このスキルはマジックリボルバー黄龍が持つスキルの1つだ。


ソウルウエポンは生きているという話をしたが、生きてるから強いんじゃない。【成長する】から強いのだ。通常の装備であれば劣化はしても強化はしない。しかしソウルウエポンはスキルを持ち、モンスターを倒すことで【レベル】が上がる。


俺の持つ黄龍は新参者だからまだレベルは2だが、このレベルが上がれば、更にスキルを覚えたり、威力が増すだろう。その可能性を思うと心の中で期待が膨らむ。


「思ったよりも【持ってかれる】!!」


だがすぐにその期待は打ち砕かれる。魔力の消費が予想以上に激しい。初めての感覚に驚き、思わず声が漏れた。それも無理はない、予想を遥かに上回る消費量だ。普段なら感じないような重さが、肩に、腕に、足元にまで伝わってきている。これまでの感覚とまるで違う。




「残り10匹!!」



そう呟き少しだけ冷静になろうとする。目の前に立ち並ぶ武者ゴブリンたちを倒し続けるだけなら問題はない。だがその先に何が待ち受けているのかが気になる。肝心なのはいつ進化した個体が現れるのか、そしてその個体がどれほど強くなっているのかだ。その不安と期待が交錯する。


「あと3体。」


意識を集中しながら、戦いを続ける。身体の中で魔力がかき乱される感覚がするが、それでも焦ってはいけないと自分に言い聞かせる。普段なら、こうした魔力消費にもっと耐えられるはずだが、今日は何かが違う。違和感を感じずにはいられない。




「どうしてボスは出てこない?」


外で騒がしい音が聞こえてくるんだ。武者ゴブリンたちが必死に小屋に向かって助けを求めているように叫んでるんだ。なのにそれに対して反応がない。


普通ならすぐにボスが出てくるはずだ。そのはずだ、俺はそう思っていた。


だがボスは現れない。武者ゴブリンたちを全て倒しても、何も起きなかった。その不自然さに、胸がざわつく。いつもならすぐに動き出すボスが、今日はまったく気配を見せない。こんなのは今までも初めてだし聞いたこともない。



「‥‥これで終わりだ。」


その言葉を口にするが何かが違う。いつもなら安心してボス戦に向かうはずなのに今回はその安心感がない。背中に冷たい汗が流れるのを感じた。思わず周囲を見渡し、すべてのゴブリンが倒されたことを確認する。その一瞬、一瞬で、自分が何か見落としているような気がしてならなかった。


小屋の中から聞こえてくる音、そしてその静寂の中で、心のどこかで不安が膨れ上がる。それでも、武者ゴブリンを殲滅したのは事実だ。ここで立ち止まるわけにはいかない。

だが、足元の感覚が重い。黄龍が俺の手に伝わる感触が警戒は怠るなと言ってくるみたいだ。


「どうして…?」


不安を抱えたまま、周囲の静けさに耳を澄ます。あのボスが出てこない理由がまだわからない。しかし確信が一つだけあった。これは普通じゃない、何かが変だ。


そして、突然、後ろから重く引っ張られるような感覚がした。瞬間、身体が振り返る。その時、俺はすぐに分かった。この場所で何かが起こるのだ、と。


「小屋の中を調べるか?いや、でも何があるか分からないのに無闇に近づくのは危険だ。それに‥」



体がやはり怠く感じる。体の感覚が何かに遮断されてるような、風邪を引いたような体の重さだ。立ってるのも辛くなり膝を付いてしまう。




「これは…



‥【デバフ】か!!」






黄龍に魔力を持ってかれてるからじゃない。これは【何者かによってデバフ攻撃を受けている】





「グギョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」







「く‥そういうことか!今回のボスは【シャーマン】だったのか!!」





正式名称は【武者ゴブリンシャーマン】この階層で相反する可能性を考えていなかった。




「くそが‥気づくのが遅すぎた!」




俺が地面に膝を付き力が入らなくなったところで小屋の中から出てきたモンスター



「やっぱりシャーマンだったか‥。」




小屋から出てきたモンスターは武者ゴブリンが2回進化すると派生するモンスターだ。

武者ゴブリンとは体の大きさも違い、俺と同程度(175センチ60キロ)の体格よりも少し大きく見える。



「ギョオオオオオ!」



武者ゴブリンシャーマンはどことなく余裕を感じ悠悠自適に俺へと近づいてくる。



デバフだと知ってれば対処も出来るし強いて言えばシャーマンだと分かってたら突撃して早々に決着はつけれた。だが長時間デバフの能力を食らってたら話は変わってくる。



「くそ‥1階だからって舐めすぎていたな。」



武者ゴブリンのランクはEなのに対し、シャーマンはCランクの下位のモンスターだ。このダンジョンであればその位の実力のあるモンスターが出現するのは早くても15階層であり、それも15階層のモンスターが何かしらのアクシデントが発生し進化してゴブリンシャーマンが出現する程度なんだ。


普通だったら20階層からたまに出る程度のモンスターがこんな入り口で出ちゃ駄目だろうが‥





「グギョオ!グギョオ!」



シャーマンは手に持つ長い棍棒を振り回しながら歩いてくる。俺をビビらせようとして遊んでるんだろう。


確かに体は重いし黄龍の銃身をシャーマンに狙いを定めることもできない。


シャーマンとは人型のモンスターに多く見られるがそのモンスターが1体いるだけで難易度が1つも2つも変わってくる。その理由はシャーマンと名前の付くモンスターは【デバフ攻撃】のスキルを持ってるからだ。


今の俺みたいに長時間受けてると立てなくなるくらいの状況になる。


ソロでこの状況になってるなら絶体絶命だろうな。





「どうせなら使わないでいたかったのに‥


‥着火。対象1体。放て。」



着火という言葉に反応して準備していたロケット花火の導線に火が付く。





「グ、グギョオオオ!?」




「進化した個体でも知能はアホのままだな。」



焦った所でもう遅い。俺が準備していたロケット花火は全部武者ゴブリンシャーマンに狙いを定めてる。



「俺の慢心が招いた種だ。キチンと反省しよう。」



「ぐ、ぐぎょ、グギョギョ、グギ、ョオ、オオオオォ!!」



初めての仕入れだからと思って奮発しすぎたな。普通に買ったマジックアイテムだったならこの光景は涙目になりながら見ててもおかしくない。



ロケット花火は次から次へと的を目掛け爆発していく。


爆発した煙で対象の的は煙の中に飲み込まれてしまってる。




「‥本当にやりすぎた。お?デバフは解けてるから倒す事は成功したみたいだな?」



数分はロケット花火が爆発してたんじゃないだろうか?



煙が晴れる頃にはその場所は跡形もなく吹き飛んでいた。




「何はともあれ【仕入れ】は成功だ。」




ここからはお楽しみのスキルを発動する時間だ。




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