第4話 仕入れとは?

武者ゴブリンの巣。


巣と言っても枯れ木や枝で適当に作ったような小屋のような物が1つあるだけの場所だ。



「小屋があるってことは進化した個体がいるのか?良く見ると全部の武者ゴブリンが警戒してるし‥当たりだ。」


この武者ゴブリンというモンスターの生態は普通のゴブリンに似ている。

通常のゴブリンだけの群れであれば1匹、または2匹が警戒をして外のモンスターは各々が好きに行動している。夜は落ちている枝や葉を集めて寒さを軽く凌ぐ程度の設備しか作らないのが普通だ。


しかしその群れの中にゴブリン以上の個体がいる時は話が変わってくる。


今見ている武者ゴブリン達の様に小屋を全ての武者ゴブリン達が守るように警戒しており統率も取れている様に感じる。


リーダーになりうる個体がいて指示を出されてる状態なんだろう。



普通であればこの場所は武者ゴブリンという低ランクのモンスターかそれ程度のモンスターしかいない。しかし、この場所に来る間にも別のモンスターには遭遇していなかった。

ダンジョンによってはモンスター同士が縄張り争いをする場合もあるが、進化した個体は縄張り争いの際に他のモンスターを倒して進化した個体ではないだろうか?



「特にこのダンジョンの浅瀬で死傷者が出た話は調べても出てこないから十中八九間違いないな。」



他にもモンスターが進化する可能性はあるが1番の可能性は探索者の人間を沢山屠ったモンスターが進化するというのがある。

高ランクダンジョンに多く見られる現象だが、中でも有名なのが【殺人鬼リッパーの館】という外国のダンジョンだ。

最上級ランクのSSランクのダンジョンであり元はSランクのダンジョンだった。しかしボスモンスターである【リッパー】というモンスターが探索者を沢山屠ったことで進化してしまいダンジョンランクが1つ上がってしまった。


ボスが進化したことでダンジョン事態のモンスターや環境、トラップも成長してしまったというのがあるが、今回の場合はまだまだ解決できる内容であり浅瀬のモブモンスターが進化した程度ならダンジョンにも影響はないだろう。



「もしかするとこのダンジョンのボス級モンスターが進化してて影響を受けてる可能性もあるけどな。」



まぁそうなったとしても俺の関与する事ではない。ここのボスモンスターはデータも揃ってるし攻略情報もあるんだからリッパーみたいにはならないだろう。




「念には念を入れるか。早く帰りたいし。」




そろそろあの武者ゴブリン達のお相手をしようかね?



俺は自分を過大評価しない。準備には余念はなく、石橋も叩いて叩いて渡る派だ。



「出費は嵩むが最初の仕入れだし派手に行こう。」




収納リングからロケット花火に似たマジックアイテムを数十本と取り出し武者ゴブリンの小屋に狙いを定めて設置していく。



「風も無いし、角度はこんなもんだな。」




仕事とは下地がキチンとなっていれば大抵が成功すると言っても過言じゃない。‥過言かもしれないが準備を怠って何か失敗するよりは万倍良いのは明白だ。



俺が今収納リングから取り出したマジックアイテムは【ロケット花火(改)】俺のお手製のマジックアイテムだ。


スキルが使えない分補うにはアイテムに頼るしかないと気づいてからはマジックアイテムについて勉強し、そして市販の販売しているマジックアイテムに負けず劣らずの製品を作ることに成功した。


マジックアイテムは強いし誰でも扱える物が多いがその分値段も高い。

そんな物を日常的に使用してればいくらお金があっても足りなくなる。



「幸いこれを作るには低級モンスターの魔石や倒すのが簡単なモンスターの素材だからな。」



しかし自分で材料を調達して作ってしまえば元手はただだ。


それなら自分で作るに決まってるだろう。本当であれば1本5000円〜10000円はするようなマジックアイテムを惜しげもなく出していく。その数は百本は有に超えている数だ。



「外の武者ゴブリンは‥20匹。リボルバーの弾数は‥50発はある。余裕だ。」





1番近くの武者ゴブリンにマジックリボルバーの銃身を向け兜に隠れていない顔に狙いを定める。



武者ゴブリンの風貌は上半身が鎧のような物を着て頭には兜をしている緑色の俺の腰辺り程度の身長のモンスターだ。体を守られてる部位は多いので普通のゴブリンよりは防御力は高いがそれでも生身の部分は通常のゴブリン程度。



「動きも遅いしワンショットワンキルで行ける。」





1つ深く深呼吸をして心を落ち着かせる。アドレナリンがドバドバ出てるのが分かるが必死に落ち着かせ冷静に自分を俯瞰するイメージ。



「すぅー‥ふぅー‥



‥いくぞ。初めての【仕入れ】だ。」





1人でダンジョンに入りモンスターを討伐するのは数え切れない程してきだが、今迄のモンスター討伐はなんだったのかというぐらいに緊張している。手も心なしか汗ばんでるようだ。



初めてダンジョンに入った時よりも、学生の頃に告白された時よりも、誕生日にサプライズされた時よりもドキドキしている。





「セット。【マジックショット】。」




その言葉がトリガーとなり1番近い武者ゴブリンの額に弾丸が命中する。




『グギョオオオオ!!』



『ギョギョオオ!?』




他の武者ゴブリンも敵襲に気付いたが突然の事で混乱してるようだ。







仕入れのはじまりだ。




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