第2話 新しい門出に福来たる




「ふぅー‥やっと一段落した。」



慣れしたんだ町を飛び出し俺は新しい居住地を東北の都市へと決定した。


探してみると思ったよりも良い物件があり直ぐに住むことも出来た。家具も一通りある所だったので余計な家電とかの出費も抑えられたのは嬉しい誤算だ。



「アルバムか‥懐かしいな。あの頃は楽しかったな。


これなんて俺がリーダーだったんだよな!!はは、懐かしいな‥‥」




引っ越しの荷造りが一段落すると荷物を入れていた段ボールの中から高校生の頃のアルバムを徐ろに開いて干渉に浸ってしまう。



3-A 新巻 剛(あらまき ごう)


この頃はヤンチャな感じで茶髪にして学校指定のネクタイもだらっと付けて人生楽しそうにしている俺が写っていた。


「この集合写真も仲良さそうだ‥はは、涙が出てくるわ。」



昨日まで仲の良かったパーティーメンバーであり昔から一緒にいた連れでもある


【佐々木 武蔵(ささき むさし)】



写真では肩を組んで楽しそうにしてる俺と武蔵は今離れ離れになってるとは夢にも思ってないだろうな。


武蔵は俺がチームから脱退するのを断固として反対してくれていた。


そもそもが俺がいたチームは俺含め5人。その中の2人が俺を脱退させるのを断固拒否してくれてたんだ。



『ああ?剛が抜けるんなら俺も抜けるからな?』


『あ、じゃあウチも一緒に抜けよーかなー?』




「はは、毎回そんな感じになるからリーダーも困ってたな。アイツラ今頃怒りで荒れ狂ってないと良いけど。」



本当はアイツラと俺も一緒にいたいがアイツラの今後を考えたら俺みたいな御荷物と一緒にいるよりも実力者だけでチームを組んだほうが良いんだ。



スマホも新規契約して誰にも何も言わず引っ越した。親には手紙も置いてったし当分は1人で頑張るつもりだ。







「‥お?宝くじ?そう言えばあの時に買ってどうせ当たらないだろうと思ってアルバムに挟んでたな。」


アルバムを開くとひらひらと落ちる宝くじを発見した。これで大金を当ててスキルを使えるように!なんて言ってたな。


皆で記念に買った宝くじ。どうして記念に買ったかは覚えてないがそういえばそんな事もあった。

どうせ当たらないだろうと思ってそのままここに挟んでたっけ。




「どうせ当たってないだろうけど一応確認だけしておくか。」



スマボで簡単に見れると思い、宝くじの【102回年末スーパー宝くじ当選番号】と入れて確認した。



この宝くじは最大10億円、そして2等は5億円という当たれば人生が変わる額の宝くじ。夢見て買う人は多いが俺は端から当たらないと思ってるのでこれ以降は買ったことはない。



それに運という不明瞭な物を信じてもその栄光を手に入れるのはごく僅かなんだ。そんなのに掛ける暇があるなら1回でも多くの鍛錬をした方が良いに決まってる。



「‥ほらな。【当選番号は全部揃ってる】けど組数が違うじゃないか。」



五億円の大当たりの場合は番号と組数が一緒じゃなきゃ当たってない。俺は番号は一緒だったけど組数が違うからはずれって訳だ。


「どうせそうなるとは思ってたさ‥でも番号は全部揃ってるんだから少し位は当たってるんだろ?」



組数以外全部当たってるならまぁまぁな金額にはなってるよな?10万とかでも当たってれば今日の晩御飯は外食できるんだけどな。


「あったあった‥‥って、え?0の数多くないか?え?え!?」




全て番号が揃ってるのは組数と同じ数あるんだからそれなりの金額にはなると思ったがその当たりの0の数を何度数えても8個あり、そして1番左側には1の数字がある。




「まてまて。その前に本当に俺の数字は当たってるのか?1.5.9.7.7.7.6.9

・・・確かに当たってるよな。


え?ええ!えええ!!」





俺の宝くじは運良く当たっていた。しかもその値段は100000000円。




「1億円も当たったのか?まじか‥



まじか‥




まじか?



まじかー‥






うん。」







突然の幸運に頭が真っ白になり何も考えられない。それでも体は勝手に[銀行]へと向かっていた。






「当選おめでとうございます。ご要望通り現金の受け渡しでお間違いなかったですか?」


「は、はい!間違いないです!!」




銀行に来た俺は直ぐに宝くじのお金を全て現金で貰いそそくさと家へと帰ってきた。


一億円ってこんなに重いんだな。大金なだけに帰り道は何故か恐怖を感じていたが夢心地だった為直ぐに家へと辿り着いたように感じる。




「1日で億万長者だよ‥はは、今迄の苦労はなんだったんだ。」



これだけあれば当分遊んで暮らせる。わざわざ辛い事をしなくていいし、車も高級車に乗れて住む場所もダンマンの良いところに住めちゃうな。


これ何年分の収入だ?これだけあればわざわざ危険なモンスターと戦わなくても余裕のある安定な暮らしが出来るし、マンションとか建てて家賃収入とか?それするにはお金は足りないか?でもこんなに大金があれば何でも買えちゃうなあ?





「ぐふふ!これで俺も金持ちだ!ぐふふ‥‥



ぐふふ!




ぐふ‥





‥‥‥なんてな。





【ショップ入金一億円】。」




スキルショップの能力で今ある一億円を全て【入金】した。






遊んで暮らせる?高級車?余裕のある安定な暮らし?



今はいらない。そんなのジジイになってから自分の力で稼いだ金でやってやる。



俺はアイツラと肩を並べたい。それだけが俺の今【欲しいもの】だ。








【スキルショップの入金が満了しました。


ショップを開設します。】





頭の中に流れてくる天の声。




「久々に聞いたなぁ。」



スキルを取得したり何かしらの功績を残すと聞こえる天の声。最後に聞いたのは2年前だったか?いや、チームの奴等と攻略したダンジョンで聞いたな。




大金を得たのは確かに嬉しい。アドレナリンがドバドバだ。ただそれよりもスキルを発動する条件を得たこの瞬間には到底及ばない高揚感。





「俺の人生はここからだったんだ。」




待ってろ。俺はこの場所からリスタートしてやる。




「まだダンジョンにいけるな?」




そうと決まれば家になんかいてらんない。少しでも実戦しよう。




ヨレヨレのジャンパーを着込んでいつもの指輪を嵌めると足早に家を出て【ダンジョン】へと向かった。




その足取りは今迄重りを付けて歩いてたのではないか錯覚する程とても軽いものだった。



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