第31話

SIDE 龍太郎


笑ちゃん、可愛い。


俺の腕の中で、恥ずかしそうに顔を背けて、ぎゅっと抱きついてくる彼女に、俺はやられっぱなしだ。


同期からも人気が高く、というか同期だけでなく人気が高い彼女。


いつも、誰かに取られたらどうしようって気持ちがどこかにある。


「笑ちゃん、好き」


「ふふっ、私も好きよ、龍太郎」


返ってくるのがどれほど幸せか。

好きだってもっと伝えたい。

でも伝えすぎて言葉が軽くなったらどうしよう、って思いもあるから、なんとか耐えて小出しにしている。


「オムライス、笑ちゃんと一緒に食べたいな」


「私も。

龍太郎にいつもの猫描いてほしい」


「あれね…なんであんなに上手く描けないんだか不思議で仕方ないよ」


「でも猫ってわかるからいいじゃないの。

私、あの猫がツボなんだよね」



びっくりするくらい下手な、ケチャップ猫。

紙に描く猫は、美術の先生に褒められるレベルなんだけど…おかしいな。


初めて描いたときから、俺のケチャップ猫は笑ちゃんのお気に入りらしい。


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