第6話

「「あ…」」


体を離して2人して振り向くと、後ろにいたのは犬みたいな男。



「もうっ!

2人共何やってるんですか!!」


え、なんか怒ってるんですけど。

そのままこちらにやって来る彼。



「諸見里おはよ。

いやー、笑ちゃんが雪で滑ったから助けてたのよ」



私が何か言う前に、氷室先生が状況を説明してくれた。


諸見里先生(私は密かに犬男って呼んでいる)が鼻息荒くして私たち2人を見比べている。


犬男と荒川先生以外は笑ちゃんって呼んでくれるから、今の説明はおかしくないけど…状況的には怪しいかもしれない。



「そうそう。

声かけられた時笑い堪えてたのは気になったけど」


なんとか話を合わせて、横目でチラッと見ると…急いで目をそらす氷室先生。


今も滑りそうだから、今度は私の方から氷室先生の腕を掴んでいる。



「えー!ホントですか!?

2人が付き合ってるのかと思うくらいだったんですけど!」


なんとか話合わせたけど…やはり犬男は引かない。


「…じゃあ、笑ちゃん離すから3人で一緒に行こうよ。

この人めちゃくちゃ転ぶから見てて!」


なんかめっちゃキラキラした目で犬男に言ってる。



「ちょっと!

なんで諸見里先生は期待の眼差しなのよ!

もう転ばないんだから!」


さっきまでのすべりを考えて、普通に自信はない。


「まぁまぁ笑ちゃん。

転ぶだろう?


諸見里にカッコ悪いとこ見せないようにしないと…ね?」



めっちゃ笑顔なんだけど…なんなのほんと…。

絶対に転ぶ気がするし、もはや今さら可愛こぶるなんてできない。


しかも、後輩の諸見里先生にはカッコ悪いところは見せられないという、意地。


…いけんのかなこれ。



「大丈夫だし!ほらっ行くよ!

ぅあっ」





…その後滑りまくったのは言うまでもなく。

病院に到着する頃には結構体力持って行かれていた。

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