第3話 嫉妬深い男

彼と付き合い出してから、一週間が過ぎた頃に最初の異変が現れました。


【嫉妬深さ】


この時の私からしたら大した事じゃ無かったんです。


例えば、男の人とすれ違った時に、「今通り過ぎた男を見てただろ」なんて、聞いてきたりする程度の嫉妬。

私自身は嫉妬される事が、嫌でもなく、面倒臭いとも思わないタイプ。むしろ、そんな彼の事を可愛いとすら感じ、嬉しく思っていました。


こんな事で嫉妬するくらい私の事を愛してくれてるんだなと思い、嬉しかったんです。

そんな状況の中、彼との同棲が始まりました。同棲の理由は彼の生活にありました。


前にも話した通り、彼は父親が居ない時は家で過ごし、父親が居る時は家に帰らないという生活。


父親が家にいる間は公園や廃車の中で寝泊まりという、有り得ない生活をしていました。

そんな彼を助けたかった。と、言いたい所ですが私自身が彼と一緒に居たかっただけと言うのが本音でした。


だから、彼と一緒に暮らしたい一心で何度も親に一人暮らしをしたい事を伝え、数日後には古いアパートを借りる事が出来ました。


布団や服、テレビなどの最低限の生活用品を実家から運び終え、親が帰った事を見計らって、近くの公園に待機している彼を迎えに行きました。


帰り道に、今日の夕食の為に必要なパスタの材料を購入すると彼と手を繋ぎアパートに向かいました。


彼と手を繋ぎ歩く………。

嬉しい気持ちでアパートの玄関の前に着いた瞬間。


「あれっ、なおやー!?やっぱり、なおやじゃん!!」


彼の名前を呼ぶ声が聞こえ、その方向を見るとかなりポッチャリした熊みたいな男と黒髪ロングヘアーの綺麗な女が立っており、彼と話し込み始めました。


「なおやー!!お前やるじゃん!!とうとうアパート借りたのかよ!?さすが!」

「まぁな!金が溜まったから借りた!!オンボロアパートだけどな!!」


私が借りたアパートを、まるで自分が借りたかのように話す彼。しかも、給料をコツコツ貯めたお金で借りたアパートをオンボロ扱い。この時に初めて彼に対しての不信感が産まれ始めました。


ただ、友達にいい所を見せたい気持ちもあるのだろうと思い、彼の話を無言で聞いていました。


話が終わり部屋に入ると、彼は悪びれた様子も無しに部屋でくつろぎ始め、私はご飯の準備を始めました。本当は和食が食べたかったけど、炊飯器が無かったからパスタ。


近いうちに炊飯器を買いたいと思いながらパスタを茹でましたが、その願いは叶うことのない小さな願いになります。

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