第3話  きっと 一生 憶えてる

3月24日 夜


おむつをしてからは便が出続けている状態で

母は臭いをとても 気にしていた

母が気にする程の臭いはなかったんだけど

寝室には 床の間があって 神棚と御仏壇が

あったから

そこで下の世話をされる事に抵抗があったようだ


知人のひとりが

「それは神様も御先祖様も許して下さる」と

慰めてた

弟が「使ってないから」と自分の家から

空気清浄機を持ってきてくれた


おむつをするようになって 常に私か妹が側にいなければいけない状況で

有給を使える私が とりあえず 1週間休みを取った


夜 母の横で寝る用意をして 床の間の明かりを消そうとすると「そこは消さんといて」と言われた

殆ど動けなくなっていた母の下ろした手が届くように

私の顔のすぐ横に 母の手がくるようにして 眠った


その母の手が ずっと私の頰を 撫でていた

泣くのを 必死で堪えて 寝たふりをしてた


いつの間に眠ったのか

母に起こされて 眠くない振りをして

おむつを替えた

一晩に 2度 3度と替えた

「ゴメンね」

その度に 母はそう言った


でも きっと 遠慮して起こさない時もあったろう

起こされても 気が付かずに 寝ていた時も

あったに違いない


私の頰を撫でていた 母の手の感触

きっと 一生 憶えてる


3月某日

私の誕生日

ふと思い出して 何の気なしに 言葉にしていた

「あ……今日、誕生日や」

言葉にしてから しまった と思ったけど遅い

「せっかくの誕生日やのに…ゴメンね」


もう!この口 縫い合わせたろか!!


そんなつもりじゃなかったのに

いらん事言って ゴメンね

ゴメンねって言わせてゴメンね…

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