第2話

お店を出て、まっすぐ家に帰りたくはなかった。

ひたすらブラブラ街を歩き続けた。

彼との思い出がないところを探すかのように。


どんどん奥へ、きらびやかな街とは遠ざかるように

普段行かないであろう道を選んでいた。

きっと家の近所なのだろうけど、普段は会社と家の往復ばかりだったので

初見な風景が次々と瞳に舞い込んできた。


こんなところにお蕎麦屋さんあったんだー。

クリーニング屋さんこっちの方が安そうー。

今日あったことを上書きするように、初見の風景を目一杯自分の中へと

ため込んだ。

おかしなことに、上書きしようとするたび

喉をしめつける感覚に襲われる。下を向いたら間違いなく水分が溢れ出てしまう。

あんなやつのために流す水分なんかこの世にない。あってはいけない。

そう思うと、無意識のうちに早足になっていた。


あいつに負けないように。

自分に負けないように。

どんどん、どんどん、どんどん、スピードは加速していく。

今、負の感情に飲まれたらいけない!

そう思い、ついに走り出そうとした瞬間だった。


そこで私の現世の記憶を終わったのだった。


ーーーーーーーーーーー


「もしも〜し? おねーさん大丈夫ですか?」

「起きれますか?」


んんっ……。そうだ、駆け出そうとした瞬間

曲がり角からバイクが見えたような?

って


「わあああああああああああああせdrftgyふにm、お」

「うわああああああああああああ」


「え? お化け? 何? なんなの?」

羽根の生えた男の子が宙に浮いていたのだ。

男の子なんだけど、サイズはまさにぬいぐるみサイズ。

そうつまり人間では確実にない! じゃあ、この目の前の羽根が生えた男の子は

なんなの?


「もうっ!ビックリさせないでよね!」

「!!!! まさかの日本語! ってか、私バイクにぶつかったような?

あ! そっか、これ夢か〜。じゃあ今日あったことも実は夢?

そっかそっか! やけにドラマのような展開だったもんね」

「ちがうちがう! おねーさんはバイクに轢かれたよ。だからここにいるんだ」

「はいはい、夢なのに都合よくいかないのね。さっきまで最悪の夢だったんだから

今からいい夢見せてよね〜」

「待って、だからーお姉さん死んじゃったの!」

「はいはい、もういいから〜夢なのわかったから」

「どうしたら信じてくれるの?」

「そんな妖精みたいな格好のかわいい男の子に言われても説得力ありませ〜〜ん」

「妖精じゃないよーぼくは死神! 今日おねーさんこと間宮 一鈴(まみや いすず)は、付き合っていた竹中 真広(たけなか まひろ)に振られてしまい、失意の中歩いていたところ、信号無視したバイクに撥ねられた」


うそ……。私、死んだの?


「ノンノン! おねーさんは正確には死んでないの!」

は?心読まれた?

「心も寿命もぼくは読み取れるよ! だって死神だもん。

これで少しは信じてくれた?」

いや、きっとこれはリアリティーを追求した夢のはず。

そんなわけ……「あるんだな〜これが! 信じなくてもいいけど一旦ぼくの話を聞いてくれないかな?」


こうして、私の第二の人生が幕を開けようとしていたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界質屋はひっそり営業中〜現代ではモチベ0、やる気0だった私が!?!?!〜 @nekosanhakawaii

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る