異世界質屋はひっそり営業中〜現代ではモチベ0、やる気0だった私が!?!?!〜

@nekosanhakawaii

第1話

生きるって正直大変だ。

考えないといけないこと、気を遣わないといけないこと。

我慢しないといけないこと、理不尽なこと。


とにかく大変なことが多すぎる。

それでもなんとか、誰かに迷惑かけず……。

いや、迷惑をかけた人は最小限に抑えて生きてきたと思う。多分。


普通に生まれて、保育園、小学校、中学校、高校と

すべて公立だったので金銭的な負担も抑えたし

人間関係も当たり障りなく、それなりに構築もしたし

恋愛においても……まあ、彼氏も2人ほどいた。


ごくごく普通の生活を送っていたんだから

この後の未来も普通に結婚して、出産してっという予定だった。


はずなのに……。


「ごめん、別れて欲しい。彼女に子供ができてさ」


ん? 彼女? 私のことだよね?

でも私、妊娠していないけど?

え? どういうこと? 三人称単数的な彼女? ではどうやらなさそうで

そう、私自身が彼女ではなかったみたいだ。


「今日限りで連絡とかも一切しないで欲しい。変に彼女にストレス与えたくないからさ」


は? こいつ何言ってんだ? ストレス? 私には与えていいってこと?

今、私の目の前でばつ悪そうに、でも本心では悪いと思っていないだろう

薄ら笑みを浮かべているこの男、そう紛れもなく今さっきまで私の彼氏だった人だ。


話を整理すると、実は私が浮気相手で、本命彼女が妊娠をしたから別れて欲しいということらしい。

私の人生において三人目の彼氏で、私の年齢が27ということもあり

それなりに将来なんかもぼんやり考えていた男だった。


だからこそ、こんな最低なやつを見抜けなかった自分に何より腹が立った。

私、何か悪いことでもした? 確かに今日、朝のニュース番組での占いは10位と

まあまあ悪かった。 確か……


『今日のあなたはまさかな事態にショックを受けそう!でもそれは新しい世界へと

あなたを呼び込むきっかけになるかも』


新しい世界ってなんだろう? 本当は目の前の男に罵倒をしたり、文句言ったり

昭和のテレビドラマみたく、お水でもかけてやろうかななんて思っていたけど

レストランでそんなことしたら、誰がスマホで撮っているかもわからない

最悪SNSで笑いものにされるし、レストランの人にも迷惑がかかってしまう。


あれ? 私、まだ冷静に考えられる余裕あるんじゃ?

店員さんのことまで考える優しが残っている! あれ? すごくない?

なんて頭に色々なことを巡らせていたのに


「これ返すわ」


そんな私の精一杯の自我を保とうとしていた脳内会議は冷たい言葉と

カタンという、家の鍵をテーブルに置いたときの無機質な音で終了を迎えた。


「じゃあ、元気で」


感情がこもっていない台詞に、何も言い返せず私はただただ

テーブルに置かれた自分の家の鍵を見つめることしかできなかった。


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