第35話





 あたしがこぼした言葉に、皆驚いたように目を見開いている。がその後、一斉に笑い出す。



「恭ちゃん……っっ、なんで、今……っっっ」

「恭……お前、面白れぇーわ……っっ」



 抑えようにも抑えきれないように笑っている、零二と圭。そんな二人の言葉に、あたしは口元を引きつる。



 あれ……?可笑しいのかな?



 お腹を抱えている二人を見ていると、哉が口を開く。



「まぁそうだな。ほとんどの女は俺達の顔で近づいてくるけど、恭は違ったな……っ」



 哉が笑っている顔で言った言葉に、今までの言動の意味を理解する。



 抗が女嫌いだから、あたしを近づけなかった。抗の事を思っての言動、か……。



 抗に対する哉の優しさに、あたしは小さく笑みを浮かべる。

 あたしの発言を聞いていた辰己が、口を開く。



「お前、何も知らないのか」



 低くて冷たい声。いや、冷たいというより、無愛想だと思うけど……。

 何を考えているか、表情に出さないで言った辰己にあたしは、首を傾げてみせる。



「知ってるって……何をですか?」



 わざとらしさがないように、とぼけた顔を辰己に向けて尋ねる。辰己が言いたい事を分かっていながら。



 辰己達がどれだけこの地域で知られているか、黒豹がどんなチームか、転校してきたあたしでも知ってるんだと、思っていたんだろうね。

 まぁ、健介さんから一応は聞いているから、特に問題はないと思うけど……。



 辰己に顔を向けたまま思っていると、辰己が口を開く。



「いや、なんでもない」



 それだけ冷たく言い捨てると、辰己はベンチに寝そべり、今まで手にしていた雑誌を顔に乗せて眠りに入る。



 やっぱり、関わらせたくないっていう考えだ。



 辰己の言動にあたしは静かに思うが、辰己に対して悪い気はしなかった。



 今は、このくらいの距離がいいな……。





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