第28話
あたしの前に立ちはだかっている抗に声をかけたが、抗は目の前にいる零二を見たまま。零二は抗にニヤッと笑って言って見せると、抗は苛立ちの声で返す。
なんだ、この状況は……。
初めての状況を迎えたあたしは、どうすればいいか分からないでいると、零二の後ろから人影が見えた。
「こーら、零二。抗に嫌われるような事はしないの」
そう言って零二の首元を引っ張って遠のかせたのは、砦。砦の行動に驚いていると、砦はあたしと抗を見て笑みを浮かべ、優しい声で言う。
「ごめんね、抗と恭ちゃん。コイツの勝手な行動に、迷惑をかけて」
「砦は悪くない。悪いのは零二だ。……恭、行こう」
「えっ!?う、うん!」
優しい声で言われた言葉に抗が少し柔らかい声で返し、あたしに体を向けたかと思うと、腕をつかんで屋上を出て行く。それにあたしは慌てて抗に返事をすると、そのまま連れて行かれた。
抗の行動を黙って見ていた辰己達は、驚きの表情を見せている。
「まさか、女に興味がなかった抗が……」
「あんな、地味な女に興味を持つなんてな」
哉が驚きの声で、圭が面白そうに言う。そんな二人をよそに、砦は零二に体を向けて、ズイッと顔を近づけて説教を始める。
「零二、あれほど言ったよね?抗にもっと嫌われるよって」
「でも、抗が興味を持った女の子、気になるのはしょうがないじゃん?それが筋でしょ」
「それは筋じゃないよ。もうこれ以上、不用意に恭ちゃんに近づかないように……」
「嫌だね。抗が面白い反応するのを見るのが、楽しいんだから」
「零二」
優しい表情ではあるが、厳しい口調で話す砦に零二は、駄々っ子で甘えん坊な子供のように言葉を返す。それに砦はもう一度言い聞かせようとしていると、今まで黙っていた辰己が、体を起こした。
「うるせぇ、お前等」
ベンチから体を起こしたかと思うと、辰己は静かに歩き出す。
「どこ行く気だ?辰己」
「どこでもいいだろ」
圭の質問にそっけなく返すと、辰己は屋上から出て行った。
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