第20話





 アハハ……と苦笑いをただ浮かべていると、声が聞こえてきた。



「何やってるの?恭ちゃん」



 柔らかくて優しく、それでいて明るい声に振り返ると、今朝教室の前にいた零二だった。そして……。



「あっ、君……」

「昨日はありがとうございました。道案内していただいて」



 あたしを理事長室まで案内してくれた男子が、零二の隣にいた。



 もしかしてコイツも、黒豹に入ってるのか?



 見た感じ、優しくて喧嘩もしなさそうというより、喧嘩とは無縁に見える男に、あたしは零二の隣にいる事に疑問を抱く。だが、人は見た目じゃない。



「いえ。俺は嵩井砦カサイサイ。零二と同じクラスなんだ。よろしく」

「あたしは前田恭です。1年C組です。よろしくお願いします」



 優しい笑みで自分から名乗ってくれた砦に、笑みを浮かべて名乗る。



「ところで零二。彼女といつ、知り合ったの?」

「あぁ……。今朝、彼女の教室に行って、哉から聞いた話の真相を聞きに行った時にね」



 自己紹介が終わったところで、砦が零二の顔を見て尋ねる。零二は笑顔でね?と、言いたげに首をかしげて話す。あたしは零二の言葉に頷くと、砦は納得しつつも、零二を冷たい眼で見る。



「そうなんだ。でも、それはよくないよ。抗がどんな性格か、分かってるでしょ?零二、もっと嫌われるよ?ただでさえ女好きで嫌われてるのに」



 砦のはっきりとした言葉にあたしは内心、苦笑い。



 そこまではっきり言っちゃいますか……。



「それでもこの学校にようやく、女の子が来たんだよ?それで会いたがらない男はいないだろ」



 冷たい砦に対し零二は、嬉しそうに言った。ただ、あたしには引っかかる言葉が。



「あれ?この学校に女子、いませんでした?」



 あたしてっきり、女子がいるもんだと……。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る