第10話





 笑顔で自己紹介してからクラスを満遍なく見渡し、一礼する。が、声が聞こえない。



 あれ?どこか、ダメだった?



 不思議に思って頭を上げると一気に、太くて大きな声があたしを襲ってきた。



「うおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっっ!!!!!俺達にも、春が来たああああああぁぁぁぁぁーーーーーっっっっ!!!!!」

「いい!!メガネっ娘、いい!!!」

「もう完璧だ!!!俺達の春は、これから始まるんだっっ!!!」



 教室にいる男子達はあたしの姿を見たまま、興奮状態に近い反応を見せる。それにあたしは、特に大した反応を見せない。



 あたしが転校して来ただけで、春が来る訳ないだろ。てか、春はもう過ぎただろ。



 呆れと意味合いが違う事を思い、教室内でワーワー、ギャアギャア騒いでいる男子達を冷静に見ている。



「お前等、いい加減黙れ!!前田さんが固まってるだろ!」



 いや、固まっていませんけど……。



 担任が男子達に注意するが、あたしは平然としているだけで、心の中で否定する。担任の言葉が耳に届いたのか、男子達は黙る。それに驚いた。



 たったあれだけの言葉で、お前等は黙るの!!??



 あたしが驚いていると、担任があたしの顔を見て優しい口調で話す。



「前田さんの席は、一番奥の窓側の席。分からない事があったら、いつでも先生を頼ってくれ」



 いやそこは、隣の人とか何とか、言っておこうよ。担任なら。



 担任の言葉を聞いてあたしは、心の中で呆れつつも静かに頷き、自分の席に向かう。



 さて、隣の男子は……。



 真っ直ぐ歩いて自分の席にカバンを置いてから座ると、隣を見る。すると、隣の男子は腕の中に顔を埋めて寝ていた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る