第6話





 男子に案内してもらい、5分が経った。廊下を歩いていると、案外近かった理事長室に着いた。



「ありがとうございました」



 理事長室の前で足を止め、男子の顔を見てお礼を言う。笑みを見せて一言二言言って男子を見送ると、扉をノックする。



 そういえば、さっきの男子と歩いていた時と一人で歩いていた時で差があったけど……なんでだ?



 今さらな疑問を頭の片隅に置き、とりあえず中に入る。



 「失礼し…」

 「恭!お前、どうしたんだよ!?ここに転校してくるなんて……」



 理事長室に入ってすぐに言葉を遮られた。言葉を遮った張本人は、ドカドカと歩いてあたしに近づくと肩をつかみ、心配と驚きの表情で見ている。その行動に肩にある手をどかすと、ため息をついてから話す。



「別に、大した事じゃないよ。ただ、先生を殴って退学。何も悪い事はしてないけど」



 正当防衛なだけで、向こうがああだこうだ言い出したから、退学処分にされたんだけど。



 自分でそう説明をするが正直、あの時を思い出すとため息が出てくる。そんなあたしに気付いたのか、話題を変える。



「そうか……。それよりお前、その格好はどうした?変装か?」



 安心したような声で納得してから、あたしの格好に目の前にいる理事長……高林健介タカバヤシケンスケが不思議そうに尋ねる。

 健介さんは元青龍総長で、あたしの父の友人のいとこ。あたしの家に来てはよく、青龍について教えてくれた。年齢は今年で30。いまだに独身。暗めの茶髪で綺麗に分けられた髪の厚さがあり、両耳を覆っている。前髪は左右に寄せているが、真ん中だけは眉より長い。大人の雰囲気を出している。



「そう。その方がいろいろと迷惑にならないでしょ?ここに転校したのは、健介さんのおかげだから」




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