第216話
「椿いる?」
本鈴の1分前
たどり着いたのは別棟の図書室で
返事が返ってこなくてもわかる
あたしの目に映る真っ赤な髪
「やっと見つけた」
振り返る顔は驚きが隠せないみたいですごく間抜け
持っていた本が手からこぼれ落ちる
それでも彼はあたしを見たまま動かない
「いつもこんなとこでサボってるの?」
いろいろなところを探しても見つからないわけだ
よりによってこんな活字ばっかりの本にかこまれて
見た目に似合わなさすぎて大笑いしてしまう
小さな舌打ちされたけど聞こえなかったことにしてあげる
「椿ってB組だったんだね
それでも今まで見たことなかったのはこんなところに隠れてるから?」
「別に」
「教室まで行ったのにいないからいろんな人に聞いて走り回ったんだから」
「んな危ないことすんなよ、秋さんに俺が怒られる」
「その秋が言ったんでしょ?
あたしは弱い女じゃないって」
今度は呆れた顔
その顔にはトレンドマークの黒いマスクはついてなくて
あるのは少しだけ裂けた口の傷跡
彼が隠していたのは見える傷だったんだね
「もう痛くない?」
あたしの言葉に我に返ったように隠される
「いてぇに決まってんだろ…見んじゃねぇよ!!」
慌てた反応
顔には怯えた表情
怖がらないで
椿は大丈夫だから
痛いってさ
「それはここが?」
少しずつ椿との距離を縮める
口元を指差して、反応を見る
少しだけ眉間に皺がよる
「やっぱりこっち?」
今度は椿の胸元を指さした
ほんとにマスクない方がいいよ
「な、何言って」
こんなにも表情が豊かなんだから
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