第211話
「舐めた真似しやがって」
怒りに震える体
拳に力が入るのが見えた
それがただの喧嘩なら良かったんだけど
1人のポケットから覗く銀色に光るモノ
過去に何度も見てきて、見飽きたモノで本当に虫唾が走る
「逃げるよ」
「あぁ?」
椿の左手を掴んで後方の扉に向かって走る
「っな!!逃げるのかよ!!!!」
慌てた様子を横目に動きを確認する
ガタガタと大きな音、窓ガラスが割れた音
椅子が飛んでくることは予想できなかったな
当たらなくてよかった
「こんのクソアマ!!離せよ!!逃げるなら1人で逃げやがれ!!」
「椿少しうるさい
見えなかったの?手に握られていたんだよ」
「んだよ!!!」
「ナイフだよ
ステゴロでする喧嘩じゃないんだ
麒麟の掟なんてもう頭にないんだよ
フェアになんて戦ってくれない」
最悪…なんてことも
仮にそういう結果になった時、羅刹に貢献したのとおなじ
彼らに歓迎されてもおかしくない
後ろから大きな舌打ちが聞こえる
やっと状況を理解した?
その後ろからはあたしたちを追いかけてくる足音や、怒声罵声
聞くに絶えない悪口だよ
さて、どこに逃げるべきなのか
長い廊下を走ってるけど、
下手に教室に入るとまたさっきの二の舞になる
放課後だからもう誰もいない
先生も、生徒も
あたしが手を出せば一瞬だけど、そうもいかないし
どうしようかと悩んで階段に差し掛かった時
「そこの角曲がれ」
「え?」
「秋さんがいんだよ」
椿の不貞腐れた声
声色からするに、秋の手を煩わせたくないのかな?
でもこの状況での、その情報はすごくありがたい
秋が居るってことは、叶斗もいる訳で
一気に勝利が見えてくる
椿を握る手は無意識に強く握っていて
言われた通り秋たちの元に向かった
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